コラム
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2022.08.08

用途変更の確認申請を理解しよう1:用途変更の必要規模と続きの流れについて

既存建物の有効活用への関心が高まっている今、「用途変更」は既存建物活用の有効な手段の一つです。
最近では、各テナント、階ごとの用途変更だけではなくビル一棟などの大規模な用途変更も増えてきました。

しかしながら、その手続きに対する認識の違いや、専門性の高い内容など、難しい点も少なくありません。この記事では「用途変更をしたいが、何から始めていいかわからない」という方のために、これまで最適建築コンサルティングで書いてきた用途変更に関する内容を一つにまとめ、用途変更に関わる内容を網羅的に解説しています。

「これから用途変更を行いたい」という方の用途変更実践の筋道としてご活用頂ければ幸いです。

目次

用途変更の確認申請の前に用途変更とは?

用途変更の確認申請について説明する前に用途変更について説明します。
用途変更とは、既存建物の現在の用途から異なる用途へ変更することです。
例えば、もともと「事務所」の用途として使われていた建物を「簡易宿泊所」の用途に変更するなどが、「用途変更」にあたります。

用途変更は書類上の手続きで完結できる、と認識されている方が多くいらっしゃいますが、そのようなことはありません。

検討されている用途変更によっては、確認申請をはじめ、消防や保健所など、様々な手続きが必要になる場合があり、必要に応じた工事などを行う必要があることを理解しておきましょう。

用途変更の「手続き」の意味について

前述のように、既存建物の現在の用途から異なる用途へ変更する際には、用途変更の手続きを行う必要があります。この場合の手続きには、工事などの書類以外の手続きも含まれる場合があるので注意が必要です。

用途変更に手続きが必要な理由は、建物の用途によって、消防や避難などの建物の安全の基準が変わってくることが主な理由です。そして、この「手続き」には工事が必要になる場合があります。

例えば、用途を事務所から簡易宿泊所に変更した場合、用途が事務所の時には求められていなかった消防設備の設置などが求められます。このように、消防や避難に関する内容などが必要になります。

用途変更をご希望の方は、ご自身が検討されている用途変更では工事等も含めてどのような手続きが必要になるか、しっかりと確認しておくことが重要です。

用途変更の手続きで、知らない間に違反建築物になってしまう?

建物を使っていく過程で、確認申請が必要な増改築や用途変更をおこなっていて知らないうちに違反建築物になっていた、ということがあります。新しく建物を建てる時には、確認申請が必要になってくることは割と知られていますが、用途変更にも確認申請が必要な場合があります。違反建築物は既存不適格とは別の概念です。それぞれの違いをしっかりと理解しておくと手続きがスムーズになるので、この機会に確認しておきましょう。

>>「違反建築物と既存不適格建築物の違いについて」

用途変更して容積率の制限を超えてしまっていた場合、どう対処すればいいですか?【よくあるご相談】200m2を超えていなければ問題ないのでしょうか?

新築時に共同住宅の駐車場の用途にすることによって、敷地内の建築物の各階の床面積の合計(延べ面積)の1/5を限度として延べ面積に算入せず緩和することができます。

しかし、建物の新築後、駐車場よりも別用途の方が賃料を多くとれるとの考えから、例えば駐車場を事務所にコンバージョン(用途変更)することによって、容積率の制限を超えてしまっている相談をよく受けます。

このような事態を避けるためにもしっかりと用途変更に必要な手続きを行なっていくことが重要です。

この場合、ご相談者は用途変更面積が200m2を超えていないため、問題ないと考えている方が多いです。しかし用途変更の確認申請が必要ないイコール容積率を満たさなくても良いではないため注意が必要です。

それでは駐車場を別用途に変更したため駐車場緩和が使えなくなってしまったら、即容積率オーバーになってしまうか、というと意外とそうではありません。当時建てられて法律と現在の法律が違っていることが容積率の緩和計算においてもあります。例えば共同住宅の場合は共用廊下やエントランス、エレベーターなどの緩和が当時建てられた法律にはなかったが、現在の法律では緩和を受けることができるという事もあります。

ここまでのお話をして、もし容積率が問題ないなら、駐車場を別用途(例えば飲食店)に用途変更しても良いと早合点することも実はできません。例えばその駐車場が駐車場条例によって設けられたものであるならば、駐車場条例違反になってしまうためです。また防火の問題、避難の問題等、建築基準法は多岐にわたるため、それらの確認が必要となります。

このような事態を避けるためにも、用途変更を考えている場合は設計事務所に相談をして用途変更の確認申請が必要な場合は手続きを行なっていくことが重要です。

>>「用途変更の手続きが必要だった!?違反建築の場合はどうなるのか!?」

用途変更の確認申請が必要か確認しましょう。

用途変更を行うステップの初めに行うのが、「確認申請」が必要かどうかの確認です。

用途変更確認申請は建物の規模と用途によっては、不要な場合もあります。この内容に関してはご存知の方も多いかと思いますが、ここで改めて、用途変更確認申請が必要な規模と用途について確認しましょう。

用途変更の確認申請手続きが必要となる規模は?

建物の用途を変更して特殊建築物にする場合に次の2点を除いて、確認申請が必要になります。

・規模が200㎡以内の変更
・類似用途への変更

従前の建物用途と新しく計画しているテナントの用途が類似用途に該当する場合は用途変更の確認申請は必要ありませんが、類似用途ではない用途に変更する場合は用途変更の確認申請が必要になります。

例えば、物販を営む店舗から、飲食業を営む店舗の場合は確認申請が必要になってきます。一般のお客様から考えると同じような用途の建物でも建築基準法では類似用途に該当しない場合も多いので注意が必要です。

>>用途変更の確認申請が必要な類似用途とは

用途変更の確認申請手続きが必要となる用途について

用途変更確認申請とは、建物を現在使用の建物用途から特殊建築物の用途に変更する場合に必要な確認申請手続きです。厳密には違うのですがわかりやすく説明すると特殊建築物とは住宅と事務所以外の用途の建物です。
定期的にいただく質問の中で200m2を超える用途(例えば飲食店)を事務所に用途変更を行う場合は用途変更の確認申請は必要ありません、逆の場合は必要です。

事例1:1、2階を物品販売業を営む店舗(延床面積300m2)→1、2階を飲食店(延床面積300m2
事例2:事務所→飲食店(300m2)

事例1の場合・・・物販店(本屋、レコード店、服屋)と飲食店は類似用途と感じる人もいますが、建築基準法では類似用途とはなりませんので確認申請が必要となります。

事例2の場合・・・事務所から飲食店の場合も200m2を超えるため確認申請が必要となります。
事務所用途は特殊建築物ではありませんが、飲食店は特殊建築物となります。特殊建築物は建築基準法では重要なキーワードとなります。

リンク先のブログではなるべくわかりやすく解説していますので、この機会に用途変更と一緒に正しく理解しておきましょう。

>>特殊建築物を理解しよう

200m2未満の用途変更は確認申請が不要になりました。

平成30年6月27日に公布された「建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)」により、2019年6月26日から建築基準法第6条第1項第一号建築物の面積要件が100m2超から200m2超に変わりましたので、関連事項として覚えておくと良いかもしれません。

>>用途変更が200m2以下は確認申請が不要になる!?

200m2以下の取り扱いに注意!

用途変更を行う際に、よく勘違いしてしまうのが「200m2以下」の扱いかたですので、用途変更を検討されている建物が200m2以下の場合でも次の点に注意してください。

用途変更は合算の面積で手続きされる!

用途変更を行う際の注意点の1つ目は、「建物内での用途変更の合算の面積で用途変更手続きが行われる」ということです。

事例3:1階:事務所(180m2)2階:事務所(180m2)
→1階:飲食店(180m2)2階:物品販売業を営む店舗(180m2)
合算で360m2のため用途変更確認申請が必要!!

事例3の場合・・・ワンフロアー180m2の3階建の事務所ビルがあったとします。
その1階を飲食店に用途変更した場合ですと、180m2の用途変更になるので、確認申請は不要です。

しかし、この2階を新たに物品販売業を営む店舗に用途変更をする場合はビルに対して、(飲食店+物品販売業を営む店舗)が360m2となるので、確認申請が必要になります。テナント入居の際の用途変更を検討されている方は、事前に入居先の建物のテナント状況を確認しておきましょう。

この場合の用途とは最後に確認申請をして確認済証が交付された時の用途となりますので、その点も注意が必要です。

>>用途変更を理解しよう:200m2以下の場合

用途変更の確認申請が200m2になった背景を考察

用途変更の面積が100m2→200m2以下に変更した理由としては国の施策の影響が強いです。
国交相が検査済証を取得していない建物の取扱いのガイドラインが制定された事もそうですが、近年の建築基準法の法改正は既存建物の再利用を促す法改正が多いです。
用途変更確認申請の面積が200m2超からとなったことで、既存建物の有効活用が促進されるようになりましたが、200m2以下ならば建築基準法を無視して良いというわけではありませんので注意が必要です。

用途変更の確認申請の流れについて

用途変更確認申請が必要な場合は手順通りに手続きを行なっていきましょう。用途変更確認申請の流れを簡単に説明すると次のようになります。

主な流れ

①資料の確認 
・確認済証、検査済証、消防適合証明書の書類の確認
・既存図面の確認(確認申請図、竣工図、構造計算書)

②関係法令の確認 
・建設時の法令確認(既存不適格の有無確認)
・用途変更したい特殊建築物の種類確認
・現行の関係法令、許認可確認

③確認申請書、図面作成
・既存不適格調書
・確認申請図面作成

・確認申請書作成
・その他許認可が必要な申請書作成

④工事着工、完了検査
・完了工事届け行政に提出
・その他許認可が必要な完了検査

用途変更は完了検査がありません。しかし確認済証が交付されたら終わりではありません。手続きとして忘れてしまいがちなのが完了工事届けの提出です。こちらの届出は確認申請を交付した確認申請機関ではなく所轄の行政への届出となります。書類自体は用途変更確認申請書の簡易版のような形です。
手続きの流れやその他必要な資料についての詳細は以下の記事で確認しておきましょう。

>「用途変更の確認申請を理解しよう3<手続きの流れ、必要書類>」

確認申請が不要な用途変更でも消防への届出は必要ですか?

指定防火対象物等の場合、確認申請が不要な防火対象物の用途変更や修繕、模様替え、建築に係る工事等を行う際には工事等を始める7日前までに、その内容を防火対象物を管轄する消防署に届出る必要があります。

用途変更を行う際に、建築基準法上の手続きを気にされる方はいますが、消防やその他必要な手続きに関しては気にされていなかったり、知らなかったりする方が稀にいらっしゃいます。

用途変更を行うにあたり、消防への届出は非常に重要なポイントになります。確認申請が不要だったとしても、消防への届出が必要になりますので、しっかりと確認しておきましょう。

>>「用途変更における消防への届出について」

用途変更の確認申請の費用と注意点を確認しましょう

用途変更の確認申請を円滑に進めるために

上記のような流れで用途変更の申請が行われていきますが、用途変更はもちろん、その他の営業許可等の許認可も場合によっては時間が想定よりかかることがあります。したがって、最初から計画的にスケジュールを組まないとトラブルの原因となってしまうため、用途変更も費用とスケジュールのバランスをしっかりと考えることが重要です。

前述の通り、用途変更は書類上の手続きだけではなく、必要に応じて工事や調査などに費用がかかることもあります。用途変更を検討されている方は、そのあたりについてもしっかりと理解しておきましょう。

特に費用については後になって、「工事費用がかかることを想定していなかった。」とならないように事前にどれくらい費用がかかるのかを確認しておくことが重要です。
用途変更の確認申請を行うときは、内装設計は店舗デザイン事務所、申請業務は設計事務所という事もあります。そのため建築基準法に関わる防火区画や採光、換気、排煙等のことがデザイン事務所では理解できていない場合もありますので注意が必要となってきます。
特に入居者が商業テナントの場合はオープン日は死活問題になってきますので建築確認や消防手続きは慣れている業者に頼むことが重要です。

>>「用途変更の費用について」
>>「用途変更の費用負担の要因と対策方法について」

用途変更の必要書類に不備はありませんか?

私たち最適建築コンサルティングは、用途変更のご相談を受けた際に、主に次の資料があるかどうかを、お伺いしております。既存建物の用途変更を検討されている方は次のものが揃っているかどうか予めご確認されていると費用や期間などの話しまで比較的スムーズに進むことが多いです。

<必要な資料>
・建築図
・設備図
・構造図
・確認申請書、確認申請図
・構造計算書(建物の規模によっては構造計算書がない場合があります。)
・確認済証
・検査済証

資料の確認時に確認済証、完了検査済証がない場合は、別の手続きが必要になります。現段階で確認済証、検査済証がないという場合は、その対応方法について確認しておくと良いかと思います。

>>「検査済証がなくてお困りの方」

>>検査済証がない、ガイドラインを利用して用途変更を実現した事例はこちらから参照できます。

また、既存の建物の確認済証、検査済証が発行されているか不明であれば、最適建築コンサルティングにご相談ください。私たちは、少額で確認済証や検査済証の発行の有無の調査業務とコンサルティングを行なっています。

>>「検査済証、確認済証の再発行サービスはじめました」

用途変更の事例について

用途変更の事例をリンク先では紹介しています。具体的にどのように用途変更を進めるのか事例を通して確認してみてください。

>>「飲食店を物品販売業を営む店舗へ用途変更(検査済証有り)」

用途変更の確認申請なら、最適建築コンサルティングへ

私たち最適建築コンサルティングは、一級建築士事務所としての法規の知識や技術力、行政と正確に折衝を行う交渉力を活かしてお客様の用途変更を徹底的にサポートしたいと考えております。

また、私たちは建物を用途変更をして最適化するのはもちろんのこと、既存建物を活かしたデザイン・空間の獲得や建築やブランディングのノウハウを駆使して、既存建物を現代の需要に合うようにリノベーションするなど、原状回復だけではなく、再生し更新を行う為のデザイン提案にも力を入れ、より良い社会の実現を目指しています。

そのため、弊社では、企業の所有する大規模な物件やプロジェクトだけではなく、個人オーナーや個人事業者の方が所有する既存建物まで幅広くご対応させていただいております。

予算や規模の大小に関わらず、検査済証がないなどの既存建物の活用でお困りの際はどんなことでも構いませんので、ぜひ、最適建築コンサルティングにご相談ください。

用途変更以外にもよくお問い合わせいただく内容をQ&A形式でまとめています

お問い合わせをいただいたり、初回の打合せにあたって、よくいただく質問をQ&A形式でまとめました。
相談を考えている方は皆さんも同じような疑問を持っているものです、相談いただく前の参考にしてみてください。

>>「よくあるQ&A<検査済証がない、増築、用途変更をしたい>」

増築の確認申請ついて

最適建築コンサルティングでは用途変更の確認申請の他に、増築の確認申請の必要の有無についてお問い合わせをいただくことが非常に多いです。増築の確認申請が必要ないと思いこんでいたら、実は必要で知らないうちに手続き違反になっていたなんてことにならいなためにも、相談いただく前の参考にしてみてください。
例えば10m2以内であるなら確認申請は必要ないと思い込んでいる人が多いですが、敷地が準防火、防火地域に該当するのであれば1m2でも増築すれば確認申請が必要となります。

>>「増築の確認申請【フローチャート付き】:増築の確認申請を徹底解説【完全版】」

大規模の修繕、大規模の模様替の確認申請ついて

最適建築コンサルティングでは用途変更の確認申請の他に、大規模の修繕、模様替えの確認申請の必要の有無についてお問い合わせをいただくことが非常に多いです。大規模の修繕、模様替えの確認申請が必要ないと思いこんでいたら、実は必要で知らないうちに手続き違反になっていたなんてことにならいなためにも、相談いただく前の参考にしてみてください。
例えば木造3階建ての既存の階段を架け替える場合(半分以上)は確認申請が実は必要となります、また大規模の修繕、模様替えの場合は完了検査があります。
>>確認申請を理解しよう2<大規模の修繕、大規模の模様替>

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