2019.10.31

<事例>検査済証なし、図面なし!!木造アパートを老人ホームへ用途変更した事例

検査済証がない建物は、どのようにしてサービス付き高齢者住宅(サ高住)(老人福祉施設)へ用途変更すればいいのか?

このプロジェクトは、神奈川県横須賀市に建つ共同住宅を用途変更し、サービス付き高齢者住宅として開設するという計画です。ご相談頂いた内容は、「計画の過程で、サ高住として用途変更を行う際に許認可されるためには建物が建築基準法関係規定に適合している必要があるが、物件に検査済証が取得されていなかったことがわかった。」ということでした。また、当時の時点では100㎡を超えており、用途変更の確認申請が必要な規模でもありました。

<事業データシート> 構造:木造木質パネル構法 規模:地上2階建 敷地面積:196.73㎡ 建築面積:71.55㎡ 延床面積:129.18㎡ 既存用途:共同住宅 確認済証:取得済 検査済証:未取得 目的:サ高住への用途変更、許認可の申請

既存建物を用途変更する場合、まずは検査済証があるかどうかを確認します。

繰り返しになりますが、このプロジェクトでは検査済証がないことが発覚しました。今回のように許認可が必要な用途変更やまた、確認申請を伴う工事を行う際には検査済証の有無が大きなポイントになります。具体的に既存建物が確認済証、検査済証を取得しているかどうか調べる場合、まず物件が該当するエリアの行政機関、今回の場合は横須賀市役所で「建築計画概要書」、「台帳記載事項証明書」を取得することで物件の手続きの状況を知ることができます。建築計画概要書とは、敷地面積・建物の大きさ・高さ・配置図などが記載された書類で、台帳記載事項証明書とは紛失した確認済証や検査済証の代わりに発行してくれる証明書で、確認済証と検査済証交付の記録が記載されている書類です。古い建物では建築計画概要書を行政が破棄している場合があり、台帳記載事項証明書しかない場合がありますが、検査済証の取得の有無は台帳記載事項証明書だけでもわかります。このプロジェクトでは台帳記載事項証明書で確認済証はとれているが、検査済証がとれていないということを確認しました。

このように検査済証がない既存建物の用途変更を行う場合、既存建物が当時の建築基準法に適合していたかどうかという「法適合状況調査」を行って既存建物が既存不適格建築物であることを証明する必要があります。横須賀市に問い合わせたところ、この物件でも、用途変更に向けて既存建物が既存不適格建築物であることの証明を行なっていく方針となりました。

検査済証がない建物を活用するための「法適合状況調査」はどのように進めるのか?

用途変更の確認申請を行う場合や今回のように許認可の申請で建物の建築基準法関係規定への適合状況の証明を求められた場合、検査済証の有無が非常に重要なポイントとなります。原則的に検査済証がない建物については、確認申請を行うことができませんが、国土交通省が2014年に設けた「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合調査のためのガイドライン」に基づいて、調査、報告を行うことで確認申請を行うことが可能な場合があります。

>>検査済証がない場合のガイドライン、法適合状況調査

それでは、具体的にどのような調査、報告を進めていくのかを紹介します。

検査済証がない建物を活用するためのガイドラインを用いて既存不適格建築物であることを証明する

用途変更を行うために、まずは敷地条件を確認しましょう

まず私たちが行ったのは建物が該当するエリアの敷地条件の確認です。 特に重要なのが、既存建物の用途地域が用途変更を行える地域か確認することです。この物件の該当するエリアの用途地域、防火地域は以下の通りでした。

用途地域:第1種住居専用地域

防火地域:法22条地域

用途変更を行う際にチェックすべきその他の敷地条件に関する補足

上記の他にも立地条件によっては接道する道路の幅員や高度地区、日影規制などに該当する場合があります。用途地域、防火地域などは役所のホームページでも確認が可能です。(一部地域では確認できない場合もあります。その場合は直接役所に問い合わせて確認することができます。)今回の敷地では、建物が建てられた当時と用途地域、容積率、建ぺい率、高さ制限などが変わっていませんでしたが、変わっている場合もあるので注意が必要です。今回は横須賀市役所行とガイドラインを用いた用途変更に関する協議を行った結果、指定確認検査機関が求める要件を満たす調査を行うように指導を受けました。それでは、実際にどのような調査を進めて行ったのか解説していきたいと思います。

検査済証がない建物をガイドラインを用いて既存不適格建築物であることを証明する際に求められた調査内容

検査済証がない既存建物を活用する為のガイドラインを用いた既存不適格建築物の証明の為に指定確認検査機関から要求された調査項目は以下の通りでした。

・図面が当時の建築基準法を満たしていること。

・図面通りに施工が行われていること

・構造躯体の強度に問題がないこと。

検査済証がない建物の現況調査を行います。

1)現場調査

敷地条件が確認できたら、現場調査では主に実測を行いながら、違反箇所の確認を行なっていきます。違反箇所としてよくあるのが、違法増築や建物が防火地域、準防火地域に該当しているのにもかかわらず防火要件を満たしていないこと、火災時の避難経路が確保されていないなどです。違反箇所が見つかった場合には是正を行う必要が出てきます。しかし、今回の建物では致命的な違反箇所は見受けられませんでしたが外構部分の一部のコンクリートブロックが土圧をうけていました。

2)机上調査・図面の復元。

実測した内容をもとに図面を復元していきます。ここで確認すべきことは確認申請時から面積が増えていないか、建物の高さは守られているかなどの集団規定の違反です。今回の建物は確認申請時からの変更はありませんでしたが、もし違反があった場合は建物の一部解体などの工事を伴う場合もありますので、注意が必要です。

3)構造調査

法的な違反がないことを確認したあとは、建物の構造に問題がないかを確認していきます。必要に応じて天井や壁を一部壊して目視にて確認します。今回の建物はハウスメーカーによって建てられた木質パネル造の2階建ての共同住宅です。そのため、各住戸の界壁の施工を防火上問題がないかを確認しました。構造調査は木造部分、コンクリート基礎部分に分けて構造調査を行なっていきました。木造部分の建物構造については、型式認定を取った建物でしたので、当時の施工方法や状況を建てたハウスメーカーに確認したところ建物が該当ハウスメーカーで登録されており工場生産で建てられたことがわかりました。また、当時の施工方法について確認をとり現場にて抜き取りで施工状況を確認しました。コンクリート基礎部分は、超音波による配筋調査とコア抜きによる強度圧縮試験、中性化試験などを行いました。また、敷地内にある擁壁(工作物)の構造についても調査を行いました。地域によって変わりますが、敷地境界内高さ2mを超える擁壁や崖がある場合は崖条例に関わる場合があるので注意が必要です。

ガイドラインを利用して検査済証のない建物の法適合状況調査報告書を取得する

ここまでの内容を調査結果としてまとめて、第三者検査機関である指定確認検査機関に法適合状況調査を申請することによって、検査機関の検査員がこちらの提出した資料をもとに現場検査にきます。そして問題がないようであれば建築基準法関係規定に適合していることが証明されます。もう少しわかりやすく説明すると、もう一度完了検査を受けるようなイメージです。今回のプロジェクトではこれまでの調査などをおこなってきたおかげで、重大な指摘事項がなく、報告書で法適合と判定されました。これにより新たに確認申請を伴う用途変更を行うことが可能になりました。

検査済証がない建物の現況調査が完了すれば、用途変更に向けて計画を進めていくことが可能になります。

今回のプロジェクトでは、用途変更に伴うサ高住の設計監理業務は請け負わなかったため、法適合状況調査の終了で設計会社さんにバトンタッチです。ただし、設計を行わないとしても事前にどのようなプランで建物を建てるのかは重要なので、ラフプランはいただくようにしており、用途変更に必要な防火、避難、消防設備や注意事項等は引き継ぎ時にお伝えするようにしています。

このように検査済証がない建物の確認申請を伴う用途変更を行う場合はいくつもの段階を踏まえながら既存不適格建築物であることの証明を行っていかなければならないのです。今回の建物は最初のご依頼時から法適合状況調査が終わり証明書が発行されるまで4ヶ月時間がかかりました。

検査済証がなく図面もない物件であった、横須賀市のサ高住のプロジェクトも無事に既存不適格建築物の証明を行い用途変更、許認可申請を行うことができました。

また、新たに確認申請を行なうことで新たに確認済証を取得することにもつながります。これは物件の評価やコンプライアンスの観点において大きな価値を持ちます。

検査済証がない建物の用途変更、確認申請をご希望の方はぜひ最適建築ブランディングにご依頼ください。

>>検査済証がなくてお困りのかた

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