事例紹介
CASE STUDY

検査済証なし、図面有り(用途変更)鉄骨鉄筋コンクリート造8階建地下1階

共同住宅の低層階を用途変更したい。

このプロジェクトは、東京都練馬区に建つ共同住宅の1階店舗を用途変更が可能なようにしたいとオーナーからの要望からスタートしました。

用途変更をするためには検査済証が基本的には必要となりますが、こちらの物件は検査済証が発行されていませんでした。

現状ではテナントの床面積が200m2を超えているため、新たに入居を検討するテナント業者が検査済証の有無を照会して、検査済証がないため断れるということが何度か続いたための依頼でした。それとは別に、将来的に物件を売却する場合でも法適合しているかどうかが資産価値を考える上でも大事な指標となってくるため、法適合しているかどうかを確認し、是正するべきことがあるなら解決しておきたいとの事でした。

昨今では用途変更の確認申請が必要ない規模であっても、大手のテナント業者の場合は検査済証が無いことにより出店を取り止めるケースが出てきているので、検査済証の有無はテナント側の出店を考える上でも大事な指標となってきています。

<事業データシート>  構造:鉄骨鉄筋コンクリート構造規模:地上8階建地下1階 敷地面積:約500㎡ 建築面積:約400㎡ 延床面積:2100㎡ 既存用途:共同住宅 確認済証:取得済 検査済証:未取得 目的:用途変更のため、資産価値向上のため

鉄骨鉄筋コンクリート構造の検査済証がない建物を活用するための「法適合状況調査」はどのように進めるのか?

鉄骨鉄筋コンクリート構造は鉄骨と鉄筋コンクリートを組み合わせた構造となります。構造の現況調査をする上では鉄骨鉄筋コンクリート構造は非常に難易度が高くなります。

構造の現況調査をする上では鉄筋コンクリート構造の中に鉄骨造が埋設されているため調査が難しく費用が多大にかかってしまうのが現状です。

しかし、今回の建物は施工監理記録が残っていました。具体的には、コンクリート強度試験、鉄筋圧接部分の引張試験、鉄骨継手の溶接検査記録、鋼材のミルシート等、構造に関わる現場監理資料です。

このような資料が残っている場合は、調査費用を大きくコストダウンを図ることができる可能性があるので非常に大切な資料となります。もし、新たに物件を購入を考える方がいる場合はこのような資料が残っているかどうかも重要な指標の一つになるのではないかと思います。

各種試験がわからいない人のために、簡単ですが試験について説明します。コンクリート強度試験はコンクリートの強度が構造図面と同等以上であるかどうかを調べる圧縮試験です。鉄筋圧接の引張強度試験は鉄筋圧接部分の鉄筋を抜き取り調査し引張強度試験を行います。いずれも第三者検査機関が検査を担当します。

鋼材のミルシートとは、鋼材メーカーが発行する鋼材の品質を証明する書類のことです。こちらが発行されていることにより鋼材品質が保証されることになります。現在でも新築工事において、現場監理をする上で広く利用されています。指定確認検査機関や公共工事の検査においてもミルシートの提出が求められます。

鉄骨溶接検査
ミルシート

検査済証がない建物を活用するためのガイドラインを用いて既存不適格建築物であることを証明する

用途変更を行うために、まずは敷地条件を確認しましょう

建物が該当するエリアの敷地条件の確認です。 特に重要なのが、既存建物の用途地域が用途変更を行える地域か確認することです。この物件の該当するエリアの用途地域、防火地域は以下の通りでした。

今回の場合は、敷地が商業地域と近隣商業地域とまたがっています。敷地がまたがっている場合は容積率、建蔽率に関しては按分、高さ関係はそれぞれの地域ごとに必要な高さ制限の検討となります。肝心な建物用途の制限に関しては過半な用途地域がその敷地の用途地域となります。今回は商業地域の方が敷地に関する割合が大きいため、商業地域の建物用途の制限を利用することなります。

今回のように、商業地域と近隣商業地域のように商業系がまたがっている場合は建物用途上の支障はありません。例えば住居地域と商業地域がまたがっている場合、どちらの用途に属するかということは、重要になってきます。例えば住居系に属しているため事務所貸しができないというようなことが生じてきます。

用途地域:商業地域、近隣商業地域

防火地域:防火地域

用途変更を行う際にチェックすべきその他の敷地条件に関する補足

上記の他にも立地条件によっては接道する道路の幅員や高度地区、日影規制などに該当する場合があります。用途地域、防火地域などは役所のホームページでも確認が可能です。(一部地域では確認できない場合もあります。その場合は直接役所に問い合わせて確認することができます。)今回の敷地では、建物が建てられた当時と用途地域、容積率、建ぺい率、高さ制限などが変わっていませんでしたが、変わっている場合もあるので注意が必要です。今回は横須賀市役所行とガイドラインを用いた用途変更に関する協議を行った結果、指定確認検査機関が求める要件を満たす調査を行うように指導を受けました。それでは、実際にどのような調査を進めて行ったのか解説していきたいと思います。

検査済証がない建物をガイドラインを用いて既存不適格建築物であることを証明する際に求められた調査内容

検査済証がない既存建物を活用する為のガイドラインを用いた既存不適格建築物の証明の為に指定確認検査機関から要求された調査項目は以下の通りでした。

・図面が当時の建築基準法を満たしていること。

・図面通りに施工が行われていること

・構造躯体の強度に問題がないこと。(構造施工資料がある場合は検査資料の確認)

検査済証がない建物の現況調査を行います。

1)現場調査

敷地条件が確認できたら、現場調査では主に実測を行いながら、違反箇所の確認を行なっていきます。
確認申請時と違っていた主な箇所は以下の通りでした。
(1)コンクリートブロックの高さ違反
(2)地下1階部分の駐車場のレイアウト変更
(3)1階テナント用の倉庫の敷地内設置(増築)
(4)2階共同住宅が1戸→3戸への変更
確認申請との相違部分に対して以下の通りの対応をしました。の見解は以下の通りでした。今回の建物は是正が必要な部分があったので、増築部分の違反に該当する部分は解体工事が伴うこととなりました。

(1)コンクリートブロックの高さを1200mm以下にするため上部の3段解体
(2)レイアウト変更の図面復元と基準法確認
(3)1階倉庫部分に関しても避難通路を妨害しているため解体
(4)各共同住宅部分の基準法確認、目視で界壁、共住区画の確認。一部区画貫通部分に不適合箇所があったため是正工事の実施

是正前 倉庫増築部分 

2)机上調査・図面の復元。

実測した内容をもとに変更部分の図面を復元していきます。

変更した部分を基準法的に問題ないか検討していきます。

3)構造調査

法的な違反確認したあとは、建物の構造に問題がないかを確認していきます。今回の建物は鉄骨鉄筋コンクリート構造となります。鉄骨鉄筋コンクリート構造の場合は調査が大変困難になります。というのは、コンクリートの中に鉄骨造が埋まっているため寸法確認が非常に難しいためです。また溶接部分の確認も難しくなってくるため、弊社に相談してくる案件でも鉄骨鉄筋コンクリート構造の場合はお断りさせていただくことも多いです。

しかし、前段で説明させていただいた通り、今回の場合は施工時の資料である、コンクリート圧縮強度試験結果、鋼材証明書や鉄骨検査報告書等の検査資料が残っていることが判明しました。そちらの内容が全て合格しそろっていること、中間検査や消防完了検査に合格していること、昇降機の検査済証を取得していること、総合的に判断して、検査機関の判断しても現状建物は適合しているという判断になりました。

こちらの法適合調査の結果により新たに確認申請を伴う用途変更を行うことが可能になりました。

検査済証がない建物の現況調査が完了すれば、用途変更に向けて計画を進めていくことが可能になります。

今回のプロジェクトでは、用途変更に伴うテナントの設計監理業務は請け負わなかったため、法適合状況調査の終了で業務は終了となります。

ただし、新たなテナント設計業者さんが入居する場合は法不適合にならないように、用途変更に必要な防火、避難、消防設備や注意事項等は引き継ぎ時にお伝えするようにしています。

最適建築コンサルティングでは必要に応じて新規テナントさんの法規チェックも行っています。

このように検査済証がない建物の確認申請を伴う用途変更を行う場合はいくつもの段階を踏まえながら既存不適格建築物であることの証明を行っていかなければならないのです。今回の建物は最初のご依頼時から法適合状況調査が終わり証明書が発行されるまで、是正工事も含めて3ヶ月時間がかかりました。

検査済証がない建物の用途変更、確認申請をご希望の方はぜひ最適建築コンサルティングにご依頼ください。

>>検査済証がなくてお困りのかた

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