- 事例紹介
- CASE STUDY
木造平屋建て飲食店を保育園に用途変更(検査済証無し)
検査済証がない建物は、どのようにして児童福祉施設等(保育園)へ用途変更すればいいのか?
このプロジェクトは、茨城県に建つ平屋建て木造飲食店を用途変更し、保育所を開設するという計画です。ご相談頂いた内容は、「用途変更する面積は200m2未満であり確認申請は必要ないが、保育所として用途変更を行う際に許認可されるためには建物が建築基準法関係規定に適合している必要があるが、物件に検査済証が取得されていなかったことがわかった。」ということでした。このように確認申請が必要ない規模である面積が200m2未満であっても、検査済証がない場合は建築基準法関係規定に適合しているかどうかが求められます。少し前までは建築士の一筆のみで法適合が認められてきましたが、最近では法的根拠を求められる事が多くなってきました。
<事業データシート> 構造:木造在来工法 規模:地上平屋建 敷地面積:900㎡ 建築面積:185㎡ 延床面積:185㎡ 既存用途:飲食店 確認済証:取得済 検査済証:未取得 目的:保育所への用途変更、許認可の申請
許認可系の場合は既存建物を法適合させることを前提で借りることも前提としてはありです。
このプロジェクトでは、オーナーが保育園の開設を目指す過程で弊社に依頼がきました。オーナーの物件探しの実情としては、保育園を開設したいが条件の良い物件が見つかっても、検査済証がないという理由からあきらめている事が多いとのことでした。そのため何とか用途変更できる物件を一緒に探して欲しいとのことでした。保育園の開園を目指す場合は建築基準法以外にも児童福祉施設の設備及び運営に関する基準や地域によってはバリアフリー条例等で細かく規制がされています。せっかく基準に合った建物であっても検査済証がないためスタート地点に戻るという繰り返しが起きています。そうなってくると、検査済証がない建物でも法適合をさせることができるのならば、何とか法適合をさせたいという考えもでてきます。
今回の建物は木造平屋建てで敷地が広くまさに保育園を運営するには最適の敷地条件でした。また詳細図面はありませんが、木造平屋建てスケルトンのため調査自体は行いやすい条件でした。
ただし、注意しなければいけないこととして違反部分がある場合は是正をしなければいけないという事です。検査済証が発行されていない理由としては違法増築や高さ違反等が考えられます。大幅な是正工事が発覚して途中で断念せざるをえない状況も考えられます。そのため、弊社では事前調査をおすすめしております。事前調査は有料ですが目視で確認できる部分で現況建物が問題ないかを確認します。問題があった場合でも是正工事するのか、その物件の契約をあきらめるかの判断の参考となります。今回の物件でも事前調査の上、法適合調査に進むことになりました。
検査済証がない建物を活用するための「法適合状況調査」はどのように進めるのか?木造平屋建ての場合
用途変更の確認申請を行う場合や今回のように許認可の申請で建物の建築基準法関係規定への適合状況の証明を求められた場合、検査済証の有無が非常に重要なポイントとなります。原則的に検査済証がない建物については、確認申請を行うことができませんが、国土交通省が2014年に設けた「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合調査のためのガイドライン」に基づいて、調査、報告を行うことで確認申請を行うことが可能な場合があります。
それでは、具体的にどのような調査、報告を進めていくのかを紹介します。
検査済証がない建物を活用するためのガイドラインを用いて既存不適格建築物であることを証明する
用途変更を行うために、まずは敷地条件を確認しましょう
まず私たちが行ったのは建物が該当するエリアの敷地条件の確認です。 特に重要なのが、既存建物の用途地域が用途変更を行える地域か確認することです。この物件の該当するエリアの用途地域、防火地域は以下の通りでした。
用途地域:第2種住居専用地域
防火地域:法22条地域
用途変更を行う際にチェックすべきその他の敷地条件に関する補足
上記の他にも立地条件によっては接道する道路の幅員や高度地区、日影規制などに該当する場合があります。用途地域、防火地域などは役所のホームページでも確認が可能です。(一部地域では確認できない場合もあります。その場合は直接役所に問い合わせて確認することができます。)今回の敷地では、建物が建てられた当時と用途地域、容積率、建ぺい率、高さ制限などが変わっていませんでしたが、変わっている場合もあるので注意が必要です。
また保育所が建てられる用途地域かどうかも重要な確認事項となります。今回はつくば市役所行とガイドラインを用いた用途変更に関する協議を行った結果、指定確認検査機関が求める要件を満たす調査を行うように指導を受けました。それでは、実際にどのような調査を進めて行ったのか解説していきたいと思います。
検査済証がない建物をガイドラインを用いて既存不適格建築物であることを証明する際に求められた調査内容
検査済証がない既存建物を活用する為のガイドラインを用いた既存不適格建築物の証明の為に指定確認検査機関から要求された調査項目は以下の通りでした。
・図面が当時の建築基準法を満たしていること。
・図面通りに施工が行われていること
・構造躯体の強度に問題がないこと。
検査済証がない建物の現況調査を行います。
1)現場調査
敷地条件が確認できたら、現場調査では主に実測を行いながら、違反箇所の確認を行なっていきます。違反箇所としてよくあるのが、違法増築や建物が防火地域、準防火地域に該当しているのにもかかわらず防火要件を満たしていないこと、火災時の避難経路が確保されていないなどです。違反箇所が見つかった場合には是正を行う必要が出てきます。今回の建物では敷地の高低差、建物の高さが一部違う箇所がありました。それらの部分を検討した結果、致命的な違反にはなりませんでした。
2)机上調査・図面の復元。
実測した内容をもとに図面を復元していきます。ここで確認すべきことは確認申請時から面積が増えていないか、建物の高さは守られているかなどの集団規定の違反です。今回の建物は確認申請時からの変更はありませんでしたが、もし違反があった場合は建物の一部解体などの工事を伴う場合もありますので、注意が必要です。
3)構造調査
法的な違反がないことを確認したあとは、建物の構造に問題がないかを確認していきます。必要に応じて天井や壁を一部壊して目視にて確認します。今回の建物は木在来工法であり、スケルトンリフォームを予定しているため、調査自体は行いやすい状況でした。
コンクリート基礎部分は、超音波による配筋調査とコア抜きによる強度圧縮試験、中性化試験などを行いました。また、敷地内にある擁壁(工作物)の構造についても調査を行いました。地域によって変わりますが、敷地境界内高さ2mを超える擁壁や崖がある場合は崖条例に関わる場合があるので注意が必要です。
ガイドラインを利用して検査済証のない建物の法適合状況調査報告書を取得する
ここまでの内容を調査結果としてまとめて、第三者検査機関である指定確認検査機関に法適合状況調査を申請することによって、検査機関の検査員がこちらの提出した資料をもとに現場検査にきます。そして問題がないようであれば建築基準法関係規定に適合していることが証明されます。もう少しわかりやすく説明すると、もう一度完了検査を受けるようなイメージです。今回のプロジェクトではこれまでの調査などをおこなってきたおかげで、重大な指摘事項がなく、報告書で法適合と判定されました。これにより新たに確認申請や保育所への許認可申請を行うことが可能になりました。
検査済証がない建物の現況調査が完了すれば、用途変更に向けて計画を進めていくことが可能になります。
今回のプロジェクトでは、用途変更に伴う保育所への設計監理業務は請け負わなかったため、法適合状況調査の終了時点で設計会社さんにバトンタッチです。ただし、設計を行わないとしても事前にどのようなプランで建物を建てるのかは重要なので、ラフプランはいただくようにしており、用途変更に必要な防火、避難、消防設備や注意事項等は引き継ぎ時にお伝えするようにしています。
このように検査済証がない建物の確認申請を伴う用途変更を行う場合はいくつもの段階を踏まえながら既存不適格建築物であることの証明を行っていかなければならないのです。今回の建物は最初のご依頼時から法適合状況調査が終わり証明書が発行されるまで2ヶ月程度の時間がかかりました。
調査が終わった後、無事に保育所を開設することができたとの喜びの報告がありました。
検査済証がなく図面もない物件であっても、正しいステップを踏めば許認可の取得をすることができます。法適合調査を経ることは物件の評価やコンプライアンスの観点において大きな価値を持ちます。
検査済証がない建物の用途変更、確認申請をご希望の方はぜひ最適建築コンサルティングにご依頼ください。
最適建築コンサルティングに関する詳細を知りたい方は資料もあわせてご参照ください。
検査済証のない建物の用途変更・増築や建築法規に関する内容でお困りの方はお気軽にご相談ください。