コラム
COLUMN

2018.10.29

建築の事業計画について

新しい事業の成功可能性を高める為に重要なことの一つとして、その事業に最適な建築を作れるかどうか、ということが挙げられます。個人住宅のようなデザイン性を追求する設計活動とは異なり、高い事業性が求められる場面では、必ずしも新進気鋭の建築家のデザインが事業成功のキーファクターになるとは限りません。事業においては、デザイン性の追求と同時に、市場調査、業界動向調査、人口動態調査などのビジネスリサーチを始め、ポジショニング、ブランド企画などの戦略策定、敷地エリアや物件の調査分析、工事やコスト管理などといった、事業性の追求も行なっていくことが重要になります。 この記事では「事業性を考慮してもらえるのかわからない。」「プロジェクトが、どのように進んでいくのかわからない。」というオーナー、事業者の方々に安心して頂くために、私たちが実際に実践している事業計画についてご紹介いたします。

事業を成功に導く為の3つのSとフェーズ

先にも述べましたが、事業の成功可能性を高める為には、その事業に最適な建築をつくることが必要不可欠です。そこで私たちは、事業の成功可能性を高める為に「Study(調査・分析)」、「Scheme(企画・計画)」、「Solution(課題解決型の提案)」という3つのSからなるフェーズでプロジェクトを進めています。

フェーズ1:「Study(スタディ)」

私たちは通常設計事務所が行なっている用途地域の確認などの敷地にかかる法規制の確認や敷地調査といったことと同時に、オーナーや事業者の方が新しく始めようとしている事業に対して、市場調査や業界動向調査を行い、事業に対する情報の共有を行なっています。また、土地や物件の所在エリアの人口動態や想定されている用途の施設の利用状況などを調査・分析し、土地や物件が持っている潜在的な可能性について考察し、状況や情報の共有を行います。事業に特化した建築を作るうえでは、事業者と同様に設計者も事業に関する情報や状況を共有することが重要になります。 過去に私たちは、自社の旧事務所の活用方法を相談されたことがありました。その事業者の方は遊休不動産の収益化を検討されており、当初は既存建物を賃貸住宅として再生する構想を検討されていましたが、私たちが市場調査・分析を通していくなかで、賃貸住宅として再生するよりも、ゲストハウスへと用途変更を行うほうが適していることが明らかになりました。その結果、利回り25%の優良な物件へと生まれ変わり、遊休不動産の収益化という目的を果たすことができました。

このように、依頼や相談を受けてから、デザインの検討をすぐに始めるのではなく、まず事業に対する調査・分析を行うことで、ビジネスの可能性を最大限に引き出すことができます。対象の事業に関する状況を正確に把握することが、次のフェーズ2で行われる企画・計画の精度をより高めることにつながります。

フェーズ2:「Scheme(スキーム)」

このフェーズでは、対象物件の状況や土地にかかる法規制とビジネスリサーチの結果を踏まえ、これから新しく始める事業に対して最も適している計画を検討していきます。具体的には、法規制、敷地条件、建物状況、想定予算、スケジュールなどを踏まえ、設計の基本方針の計画と、ビジネスリサーチの結果にもとづいた、ターゲットの設定、目指すべきポジションの策定、確立すべきブランドイメージの策定、ブランドコンセプトの策定などといった事業やブランディングの基本方針の企画を行ないます。 私たちのプロジェクトの進め方の特徴の一つとして、設計と同時に事業企画やブランディング企画を行なっていくことが挙げられます。事業に特化した建築を作る上では、特にブランド戦略や事業戦略をしっかりと考えることが重要になります。対象となるエリアやターゲットに対して最も効果的なブランドイメージや事業方針を意識的に考えながら企画を行うことで、建物に相乗効果を付与することができます。 例えば、ロードサイドのコンビニ跡地をリフォーム会社へと用途変更した「あっとリフォーム」プロジェクトでは、人口約6万人という小さなエリアでしたが、同業他社の動向や地域エリアの特性を踏まえ、そのエリアでどういったポジションを目指すべきか、また、どういったブランドイメージが地域のニーズに合致するのかなどをしっかりと検討し、そのポジションやブランドイメージを確立するための基本方針を策定していきました。その結果、オープンイベントでは200世帯以上もの地域の方が来訪し、エリア内の同業他社とは一線を画した圧倒的な認知とポジションの確立を実現しました。

また、テナント商業ビルのプロジェクトを計画した際には、テナントに入る側が用途変更の確認申請を必要としないように調整し、借りやすい状態に建築の計画を行ったうえで、ブランディングの企画、計画も行いました。既存のテナントビルを借り手が付くように再生する場合では、改修工事に加え、ロゴデザインやウェブデザインといったブランディングデザインがよく行われますが、新築の場合では、計画の自由度が高く、確認申請が不要になるよう借り手のニーズに直接訴求する計画を行うことが可能です。そのため新築の場合は、通常行われるロゴデザインやウェブデザインといった、ブラディングの一環として、性能、安全性、地域に対する配慮などといった新築の強みを活かした戦略もことも訴求効果を高めるために。「鹿手袋の商業テナントビル」では、これらのことを実践し、竣工後すぐに借り手が付く状態を実現しました。

フェーズ3:「Solution(ソリューション)」

フェーズ2で、事業と建築の基本方針が固まったら、いよいよ具体的な課題解決に向けた提案を行なっていきます。このフェーズでは、これまでに企画、計画された内容を実現するためのデザイン政策を行い実装していきます。例えば、建物の基本設計図面、実施図面、模型やパースなどで完成イメージを共有したり、ロゴデザインやウェブデザインなどを通してブランドイメージの共有、摺り合わせなどを行なっていきます。特に、今日の日本の社会ではデザインというキーワードだけでは伝えたい人たちに、なかなか届かないというのが現状です。伝える媒体も紙から、WEB、SNSと多様になってきています。良いものを相手にしっかり伝えるには建物個々の発信力やブランディングも必要になってきています。私たちはこれまで紹介した、3つのSのフェーズを通して、建築デザイン(はこ)という強みを活かしながらエンドユーザーに向けたWEB、CI(もの)だったりワークショップなどの(こと)体験を通してお客様のパートナーとしてブランドを一緒に作りあげていきます。

おわりに

私たちはこれまでご紹介した、3つのSのフェーズで、建築設計やブランディングデザインを事業者の方々と随時情報、状況を共有しながらプロジェクトを進めています。新しい事業の為に新築をご検討されているかた、あるいは既存建物の有効活用をご検討されている方、弊社では無料で随時相談を受け付けておりますので、お困りのことがあればどんな内容でも構いません。どうぞお気軽にご相談ください。

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