事例紹介
CASE STUDY

飲食店を物品販売業を営む店舗へ用途変更(検査済証有り)

弊社では検査済証がない建物の用途変更だけではなく、通常テナントの用途変更、出店コンサルもおこなっております。こちらのプロジェクトは、愛知県の名古屋市栄区でのレコード会社の出店計画です。こちらの物件に決定するまでに何件か出店候補が上がっては、建築的な条件があわず出店までにはいたりませんでした。
ある程度以上の売場面積を有する店舗の出店は月当たりの賃料、保証金も莫大になってきます。出店がきまってから、想定外の出店コスト増大を防ぐためと、企業のコンプライアンスの問題から出店予定の建物が建築基準法、消防法等の問題がないかの調査と用途変更の手続きまでが弊社への依頼でした。

このプロジェクトは、愛知県名古屋市の商業ビルの2階を用途変更して、物品販売業を営む店舗を開店するという計画です。物品販売業を営む店舗というと建築設計に関わりのない人からすると、どのような店舗か具体的にイメージできませんが、服屋、本屋、青果店、コンビニなどが該当します。
ご相談頂いた内容は、「内装設計はテナント側の内装設計事務所が計画をするので、建築基準法、消防法等の法規監修と行政の折衝を行って欲しい」とのことでした。

<事業データシート> 構造:鉄骨鉄筋コンクリート造 規模:地上9階地下1階建 敷地面積:375.03㎡ 建築面積:343.24㎡ 延床面積:2993.00㎡(用途変更面積:276.89㎡) 既存用途:飲食店 確認済証:取得済 検査済証:取得済 目的:物品販売業を営む店舗への用途変更、出店調査

出店調査について、既存不適格の確認と出店が可能かどうか。

今回、出店を予定している建物は複合商業ビルです。建物図面資料、消防点検資料、エレベーター点検資料等、は全てそろっていました。また、出店している他階のテナントも用途変更をしており、オーナー側もそちらの資料を全て所持しており建物管理としても問題ない状況でした。

大規模な建物の場合は、建物内部に建物管理をおこなっている会社が入っていることが多いです。名前は防災センター等さまざまですが、そちらが建物営繕や賃貸を管理していてくれます。しかし中規模の建物の場合は、建物全体を管理するための費用を捻出することが難しく、場合によってはテナントを把握できていない無法ビルになってしまっている場合があります。
そのような建物に新規で入るにはそれなりに調査が必要であり、場合によっては他テナントと一緒に確認申請を提出しなければいけないような状況の場合もあります。

調査内容は検査済証が取得しているかどうか等の既存不適格の確認と、用途変更をした場合にどのような設備が必要かどうかや用途変更時に必要な各種条例等の手続きも調べて報告します。
建築基準法の観点で述べると例えば、検討する用途や面積によっては階段が2つ必要になってしまったり、廊下幅の規定があったり、様々な規定が発生します。それを事前に想定することで円滑な出店計画が可能となります。また、建築条例も地方によっても違ってきており、例えば今回の場合はまちづくり条例の協議を工事着工の30日前までに終えてなければいけませんでした。
消防法令の火災条例も地域ごとに変わってくることも多く、物品販売業を営む店舗の場合は廊下幅等の規制が出てくる場合があるため注意が必要となります。

繰り返しますがこのように、まずは既存資料の確認、現地調査と行政との打合せ、出店プランの確認をテナント契約前に確認することが非常に大事になってきます。

用途変更設計プランの確認

今回は出店計画を立てているクライアントには内装設計を行う、設計事務所が入っています。そのためクライアントと内装デザイン業者の協業が必要になってきます。内装デザインを行う設計事務所はインテリアをメインに行なっているため、規模が大きい建物になってくると建築基準法に関わってくる規制が複雑になってしまい、手に負えなくなってしまうことがあります。用途変更する階が一つでも、建築基準法や消防法では建物全体に規定が遡及することも多いため、新築時の原設計の防災計画や防火区画の意図を汲むことができないといけません。そうしなければ建物全体が不適合になってしまう事があるため注意が必要になってきます。

私たちの業務としては建物全体の設計主旨(防火、防災計画)を読み取り、用途変更した場合に守るべき防火区画や仕様を内装デザイン事務所と共有します。

消防署予防課との打合せ

用途変更をする上で消防署との打合せは確認申請機関と同じくらい大事になってきます。なぜなら建築基準法では200m2未満の用途変更については申請が必要なかったり、特殊建築物でない用途、類似用途の用途変更に関しては確認申請が必要ないからです。そのため、消防署との事前打合せによって建物に必要な消防設備がわかります。消防設備は建物の用途や、面積、建物を使用する人の数等よって必要な消防設備が変わります。
そういった意味では消防署が一番、現況の建物用途について把握していることになります。しかし、管理が行き届いていない建物になると、現況用途と消防に届けられている用途が違う場合があります。その場合は、消防の指導によっては他のテナントも含めた用途変更も必要になる場合がありますので注意が必要となります。
ちなみに地方によって呼び名は変わりますが、ほとんどの場合は予防課という部署が消防法についての審査をします。審査に関しても確認が必要ない用途変更の場合は所轄の消防署、必要な用途変更の場合は大きい消防署に相談することになります。
以前は用途変更の場合は消防法と建築基準法が同列に見られていない場合も多く、消防署では消防法のみの指摘となっておりましたが、近年は建築基準法についても消防の審査課が勉強をしていることも多く、内装業者が消防署へ着工届を提出しにいく段階で、確認申請を提出するように消防署の予防課から指導される場合もあります。

消防署との打合せは現況用途の確認と必要消防設備の確認が必要となりますが、その他にも消防設備のレイアウトの確認が必要となります。事前にレイアウトを確認することによって、工事業者が防災設備の着工届を提出する際に円滑に進むことができます。
また消防署との打合せ記録は議事録として残し、クライアント、インテリア事務所、消防署担当者と共有することが大事になってきます。またこちらの防災計画の主旨を共有する上でも有効です。

用途変更の確認申請

確認審査機関の審査

物品販売業を営む店舗の場合は大きな建物の場合は基準法ではまずは防火区画を主に審査されます。詳細は専門的になるため割愛しますが、建物がどのような範囲で区画を行うのか、区画を行う場合は特定防火設備の区画が必要なのかなど、区画の計画がわかるように記載することが必要です。
その次は、採光、換気、排煙、シックハウス計画が問われるので、それらの計算や緩和を用いる場合は緩和の条例等の記載が必要となります。

今回の場合は排煙は自然排煙で全てまかなえるため排煙設備を有効活用できるようにレイアウトを考えてもらいました。

消防機関の審査

消防機関の審査は基本的に事前協議をしてもらっているため、消防の審査は事前協議通りの設計になっているかどうかの確認になります。事前協議を行っていないとこちらの審査で時間がかかってしまいますので注意が必要です。消防審査に関しても地域によって条例があり東京都安全条例、名古屋市安全条例など地域によって微妙に内容が変わってきますので注意が必要になります。

行政の審査

行政は建築指導課や都市計画課等の回覧を経て確認審査機関に審査内容を送ります。建築計画に関しては確認審査機関の受け持ち部分のため基本的には集団規定やインフラ関係を除きここでは質疑が出て来ませんが、各自治体の条例など用途変更の場合でも届出が必要であるにかかわらず、届出が出ていない場合は確認が交付されない場合があります。このような条例を建築基準法関係規定と言います、つまり建築基準法だけではなく各種自治体の条例を満たす必要があるため行政調査は事前に必要となります。

用途変更の場合は完了検査は必要なのか

無事に工事が終わったら工事完了届けを行政の建築指導課に提出する必要があります。こちらは現地検査がないため提出を忘れてしまう場合が多いので必ず忘れず提出することが大事です。
また消防に関しては変更の内容によって現地検査に来るかどうかが決まります。用途変更の確認申請を伴う工事の場合は、現地検査はほぼありますので検査日程を工事の工程表に盛り込む必要があります。

最後に

今回のプロジェクトでは、検査済証もあり、既存の図面も建物の管理会社が保存していたため円滑に用途変更を行うことができました。
用途変更の場合は用途変更する用途や建物の規模によって、法規のおさえどころが変わってきます。また、自治体によって基準も変わってきますので、一案件ずつ丁寧な調査が必要となります。

建物の用途変更、確認申請をご希望の方はぜひ最適建築コンサルティングにご依頼ください。

>>用途変更の確認申請を理解しよう

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