コラム
COLUMN

2019.05.04

構造計算はどれくらいの規模から必要か?

構造計算が必要な建物は規模によって決められています。建築基準法6条1項の四号で指定されている、建築の実務に関わっている方ならよくご存知かと思いますが、4号建築物が確認申請上で緩和を受け構造計算が不必要な建物であることは一般的に広まっているかと思います。その関係で同項1号〜3号に該当する建物は全て構造計算が必要と混同してしまう方がいますが、実際は4号建築物であるかどうかではなく、建築基準法第20条に記載されている内容で構造計算が必要かどうかが決まってきますので注意が必要です。それでは実際の建築基準法第20条についてみていきましょう。

建築基準法第20条について

建築基準法第20条(構造耐力)では規模や構造によって必要になってくる構造計算ルートについて一〜四号で説明しています。

第20条

建築物は、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める基準に適合するものでなければならない。

一  高さが六十メートルを超える建築物 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。この場合において、その構造方法は、荷重及び外力によつて建築物の各部分に連続的に生ずる力及び変形を把握することその他の政令で定める基準に従つた構造計算によつて安全性が確かめられたものとして国土交通大臣の認定を受けたものであること。

二  高さが六十メートル以下の建築物のうち、第六条第一項第二号に掲げる建築物(高さが十三メートル又は軒の高さが九メートルを超えるものに限る。)又は同項第三号に掲げる建築物(地階を除く階数が四以上である鉄骨造の建築物、高さが二十メートルを超える鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物その他これらの建築物に準ずるものとして政令で定める建築物に限る。) 次に掲げる基準のいずれかに適合するものであること。

イ 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合すること。この場合において、その構造方法は、地震力によつて建築物の地上部分の各階に生ずる水平方向の変形を把握することその他の政令で定める基準に従つた構造計算で、国土交通大臣が定めた方法によるもの又は国土交通大臣の認定を受けたプログラムによるものによつて確かめられる安全性を有すること。

ロ 前号に定める基準に適合すること。

三  高さが六十メートル以下の建築物のうち、第六条第一項第二号又は第三号に掲げる建築物その他その主要構造部(床、屋根及び階段を除く。)を石造、れんが造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造その他これらに類する構造とした建築物で高さが十三メートル又は軒の高さが九メートルを超えるもの(前号に掲げる建築物を除く。) 次に掲げる基準のいずれかに適合するものであること。

イ 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合すること。この場合において、その構造方法は、構造耐力上主要な部分ごとに応力度が許容応力度を超えないことを確かめることその他の政令で定める基準に従つた構造計算で、国土交通大臣が定めた方法によるもの又は国土交通大臣の認定を受けたプログラムによるものによつて確かめられる安全性を有すること。

ロ 前二号に定める基準のいずれかに適合すること。

四  前三号に掲げる建築物以外の建築物 次に掲げる基準のいずれかに適合するものであること。

イ 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合すること。

ロ 前三号に定める基準のいずれかに適合すること。

建築基準法第20条1項一号について

建物の高さが60mを超える建築物が該当します。建築基準法では60mを超える建物を超高層建築物と定義しています。超高層建築物は大臣認定が必要な建物であり、超高層建築物の構造計算の方法は平12建告1461号の告示で規定されています。時刻歴応答解析は時間ごとの建物の挙動を計算する動的解析となりますので非常に複雑で難解な構造計算となります。

建築基準法第20条1項二号について

建物の高さや軒高、構造種別によって構造計算の有無が規定されています。
a、構造が木造で高さが13m又は軒高が9mを超えるもの
b、構造が鉄骨造で4階以上の建築物(地階を除く)
c、構造が鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造で20mを超えるもの

その他政令で定めた構造物として
d、構造が組積造、補強CB造で4階以上の建築物(地階を除く)
e、構造が鉄骨造(地上階数3F以下)で高さが13m又は軒高が9mを超えるもの
f、混構造の建築物

二号は許容応力度等計算(ルート2)、保有水平耐力計算(ルート3) 又は限界耐力計算を行って建物の安全性を確かめなければいけない建築物の規模を示します。ルート2は高さ31m以下、ルート3は高さ31m以上の建物の高さに採用される計算ルートとなります。

建築基準法第20条1項三号について

a、木造で階≧3、延面積>500m2、高さ>13m、 軒高>9mのいずれかに該当する建築物で高さが13m又は軒高が9mを超えないもの

b、木造以外の建築物で二以上の階数を有し、又は延べ面積が200㎡を超えるもの

c、主要構造部の一部が石造、れんが造、CB造、無筋CB 造、その他これらに類するものに該当する建築物で高さが13m又は軒高が9mを超えないもの

三号は 許容応力度計算+屋根ふき材等の構造計算(ルート1)によって建物の安全性を確かめなければいけない建築物の規模を示します。一号、二号に比べて規模の小さな建築物が該当します。

建築基準法第20条1項四号について

一号~三号に該当しない建築物です。構造計算書を提出することを省略する代わりに構造の仕様規定を満たす必要があります。例えば木造建築物の場合は許容応力度の構造計算書を提出しない代わりに、政令で定めた壁量計算、偏心率の検討をすることによる場合が多いです。

Page Top