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2018.11.21

ホテルへの用途変更や設計を依頼、簡易宿泊所、旅館業を考えている方|ゲストハウスなどに用途変更の設計する前に押さえておきたい営業の条件

ホテルへの用途変更や設計を依頼、簡易宿泊所、旅館業を考えている方へ

近年、空き家の増加に伴い、既存建物の有効活用を検討される方が増えてきています。中でも比較的開業のイメージがつきやすい簡易宿泊所、ホテル、旅館業は既存建物の活用事業として人気があります。 一般的なイメージとして旅館業の許可を取得することが難しいと思われているかと思いますが、きちんとした手順を踏めば難しくありません。

今回は既存建物を活用した簡易宿泊所、ホテル、旅館業への用途変更を検討されている方の為に、簡易宿泊所、ホテル、旅館業を開業するための基本的な条件を関連情報とともに解説していきます。

「用途変更をしたいが、何から始めていいかわからない」という方のために、これまで最適建築コンサルティングが書いてきた用途変更に関する記事の内容を要約して解説しているまとめ記事がありますので、この機会に振り返っていただけると内容がより理解しやすいかと思います。

>>用途変更の確認申請など、用途変更に関すること一括解説

ホテル、簡易宿泊所、旅館業に用途変更の設計をする前に理解しておきたい4つの営業条件

旅館業法では、旅館業は次の3つの業態として区別されています。

(1)旅館・ホテル営業:施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの。

(2)簡易宿所営業:宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設で人を宿泊させる営業。

(3)下宿営業:施設を設け、1ヶ月以上の期間を単位として人を宿泊させる営業

例えばゲストハウスなどは上記3つの業態のうち(2)の簡易宿泊所営業にあたります。 そして、簡易宿泊所、ホテル、旅館業の営業を行う際に満たす必要がある条件は次の4つです。

①都市計画法条件

②設置条件

③構造設備条件

④消防法条件

ご自身がゲストハウス等の簡易宿泊所、ホテル、旅館業に検討している建物が、上記の4つの条件を満たさなければ、営業は行えません。以降の内容でそれぞれの条件について確認していきましょう。

【ホテル、簡易宿泊所、旅館業に用途変更設計】事前確認①:都市計画法条件

既存建物を簡易宿泊所、ホテル、旅館業に用途変更し営業を開始するにあたり、まずは既存建物が属するエリアの用途地域を確認する必要があります。簡易宿泊所、ホテル、旅館業が設置可能な用途地域は次の通りです。

・第一種住居地域(※3000㎡以下のもののみ設置可能)

・第二種住居地域

・準住居地域

・近隣商業地域

・商業地域

・準工業地域

都市計画法で定められた用途地域に従っていないと、そもそも簡易宿泊所、ホテル、旅館業に用途変更することができないので、まずはこの用途地域を確認しましょう。 また、200㎡以上の建物の場合は、用途変更の確認申請が必要です。用途変更確認申請については、建物の状況、プロジェクトのケースによって様々な場合があり実際の手続きを行う際には、設計事務所などの専門家に相談するのが妥当ですが、用途変更確認申請に関する基本的な内容については、予め理解しておくとスムーズかと思います。

>>用途変更の確認申請をお考えの方!

また、他者から建物を借り受けて営業を行う場合は、上記の用途地域の確認と合わせて、管理規約や賃貸借契約において、転貸(又貸し)が禁止されていないことや、旅館業に使用することが可能となっていることを貸主や賃貸住宅の管理会社に確認する必要があるので、注意が必要です。

【ホテル、簡易宿泊所、旅館業に用途変更設計】事前確認②:設置条件

用途地域の確認を行い、簡易宿泊所、ホテル、旅館業が設置できる地域であることが確認できた後は、設置条件を確認していきましょう。設置条件の確認では、簡易宿泊所、ホテル、旅館業用に検討している既存建物の周囲100m(または110m)以内に次の施設等があるかどうかを確認します。

・大学を除く学校(幼稚園、小学校、中学校、高等学校)

・児童福祉施設(保育所、児童館等)

・社会教育施設(図書館、博物館、公民館等)

・公園

・スポーツ施設

上記の施設がある場合は、簡易宿泊所、ホテル、旅館業の設置によって、当該施設の清純な施設環境が著しく害される恐れがないかどうかについて、当該施設の管理者等に意見を求める必要があります。これは、旅館業法に基づく学校等への意見照会と呼ばれています。

必要書類等については、保健所などの旅館業担当窓口で確認できるので、計画予定の物件の周囲100m(または110m)以内に当該施設がある場合は必ず確認してください。 特に以降の内容からは専門家への相談を行うとスムーズになりますので、相談先も合わせて検討しておきましょう。

【ホテル、簡易宿泊所、旅館業に用途変更設計】事前確認③:構造設備条件

次に旅館業法で定められている構造設備基準を満たしているか確認していきます。
こちら一例としてあげさせていただいたのは簡易宿泊所の営業条件です。

・客室数:規制なし

・客室床面積:延床面積33㎡以上(宿泊者数を10人未満とする場合には、3.3㎡に当該宿泊者の数を乗じて得た面積以上)

・玄関帳場(フロント)の設置:規制なし(国の法令上の規制はないが、条例で基準化しているケースがあり)

・入浴設備:当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障をきたさないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の入浴設備を有すること

・換気等:適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること

・その他:都道府県(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市又は特別区)が条例で定める構造設備の基準に適合すること

旅館業の許可を得る際には、上記のような許可の種別ごとに定められた条件を満たしている必要があります。また、簡易宿泊所ホテル、旅館業を設置する地域によっては条件が微妙に異なる場合もありますので、自治体などに確認するようにしてください。

【ホテル、簡易宿泊所、旅館業に用途変更設計】事前確認④:消防法条件

簡易宿泊所、ホテル、旅館業の営業の許可取得の為には、自動火災報知設備や誘導灯の設置、防災物品の使用など、消防法に基づく設備等の基準に適合していることが必要となりますので、施設所在地の管轄消防署に、図面などを持参のうえ、相談を行ってください。

簡易宿泊所、ホテル、旅館業に用途変更し営業を開始するにあたっては、これまでにご紹介した旅館業法、建築基準法及び消防法に関する条件の他にも、景観法やバリアフリー法等による届出や申請が必要な場合があるので、併せて確認しましょう。  

ホテル、簡易宿泊所、旅館業への用途変更の設計を行う前に、用途変更を正しく理解しましょう。

前述の構造設備条件や消防法の条件などでも触れていますが、簡易宿泊所、ホテル、旅館業に用途変更を行い営業するにあたり、工事などが必要な場合がほとんどです。用途変更を「書類上の手続きだけで済む」と認識されている方がいらっしゃいますが、ほとんどの場合、書類上の手続きだけで完結することはないことを理解しておきましょう。

そのほかにも、確認申請が必要な規模や手続きの流れなどについて、正しく理解できていなかったことで、後になって想定外な費用や時間が発生してしまったケースも少なくありません。

簡易宿泊所、ホテル、旅館業への用途変更を検討されている方は、事前に用途変更についてもしっかりと理解しておくことが重要です。

>>用途変更の確認申請など、用途変更を一括解説!

<注意>確認申請が不要な200m2未満の簡易宿泊所、ホテル、旅館業への用途変更で営業許可が交付されなかった、取消しを受けた事例

とくに確認申請が不要な200m2未満の用途変更の場合は認識の違いからこのような事態に繋がる場合が多いです。繰り返しになりますが、確認申請は必要がないが、建築基準法を無視して良いわけではありません。内装設計が得意な設計事務所では消防検査や保健所の検査だけを通れば問題ないと考えている方がいるので注意が必要です。

<ケース1>工事が終わった段階で指摘を受けた例
例えば旅館業への用途変更の工事が完了した段階で、防火区画や避難規定に対して施工業者が知らなかったため 許可がおりなかった。

<ケース2>許可が無事おりたのに営業の許可を取り消しになってしまった例
無事に許可がおりても本体の建物が無許可の増築をしていたため、建物の定期調査報告書の段階で指摘が入り営業停止を受けてしまった相談も受けたことがあります。

簡易宿泊所、ホテル、旅館業はいろいろな人を泊める施設です。防災、安全面に関しては万全であるべきです。もし事故があった場合に、建物に不備があった場合に例え知らなかったとしても、知らなかったでは通すことはできませんす。正しい知識が必要になってきます。

ホテル、簡易宿泊所、旅館業に用途変更した設計プロジェクト事例

簡易宿泊所、ホテル、旅館業に用途変更を行い、ゲストハウスなどを開業しようとすると、これまで解説してきた条件等に基づき、各機関と許可申請までの事前相談・協議を行い、かつ設計、建築工事、その後の検査、許可申請までを行うことになります。これら全てのことをご自身でコントロールするのは現実的に難しく、大変な労力がかかります。

そこで、弊社では、簡易宿泊所、ホテル、旅館業に用途変更を行い、開業するために必要な、行政などの各機関との事前相談から、用途変更設計、その後の旅館業の許可申請のお手伝いまでワンストップで行なっております。

弊社で担当したゲストハウス西半では、遊休不動産となっていた企業の旧事務所をゲストハウスに用途変更し、収益物件として最適化させました。簡易宿泊所への用途変更をご検討されている方はご参照頂けますと幸いです。

>>「遊休不動産(空き家)を一棟貸しゲストハウスに用途変更」

ホテル、簡易宿泊所、旅館業に用途変更の設計をするなら最適建築コンサルティング

私たち最適建築コンサルティングは、設計事務所としての技術力、法規の知識とデザインのプロとしての市場分析力、提案力を活かして既存建物が抱える様々な問題を解決し、現代社会やお客様の状況への最適化を行い貢献しております。

既存建物を活かしたデザイン・空間の獲得や、建築設計やブランディングのノウハウを駆使して、既存建物を現代の需要に合うようにリノベーションするなど、原状回復だけではなく、再生し更新を行う為のデザイン提案にも力を入れ、より良い社会の実現を目指しています。

そのため、弊社では、企業の所有する大規模な物件やプロジェクトだけではなく、個人オーナーや個人事業者の方が所有する既存建物まで幅広くご対応させていただいております。 予算や規模の大小に関わらず、検査済証がないなどの既存建物の活用でお困りの際はどんなことでも構いませんので、ぜひ、最適建築コンサルティングにご相談ください。

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