コラム
COLUMN

2020.06.11

増築の確認申請:木造住宅等の四号建築物が既存不適格建築物の場合の増築の確認申請【建築事業者必読】

お客様から増築のご相談を受けた建築事業者様から、「既存建物が既存不適格建築物で、増築の確認申請がスムーズにできるか心配だ」という旨のご相談を受けることがあります。今回のコラムでは比較的簡単な木造住宅等の四号建築物が既存不適格建築物である場合の増築の確認申請について規定緩和の内容や確認申請までの流れを解説していきます。該当する増築の確認申請をご検討の方は、当コラムをマニュアルとしてご活用いただければと思います。

目次

木造住宅等の四号建築物が既存不適格建築物の場合の増築の確認申請は比較的スムーズにできる?

これまでの既存不適格建築物の増築については、平成17年6月1日国土交通省告示第566号により既存部分への構造関係規定の適用(金物設置・構造計算添付等)が求められていました。 これがネックとなって四号建築物の増改築も困難だった訳ですが、平成21年9月1日の見直しにより告示第566号の改正がなされ、「既存不適格建築物の増築等に係る建築確認の申請手続きの円滑化について」という技術的助言も発表されています。これにより既存建物の延床面積の1/2以下の面積の増築においては構造関係規定の適用が緩和され、 平成12年5月31日以前に着工された既存不適格建築物の増改築が実務的にスムーズに行えるようになったのです。

木造住宅等の四号建築物における既存不適格建築物の増築の確認申請に関する告示第566号の改正概要と規定の緩和を簡単に説明すると・・・

平成21年9月1日の見直された、告示第566号の改正の概要を改正前と改正後で確認してみましょう。

改正前と改正後の内容を見てみると既存建物の延床面積の1/2以下の面積の増築で構造上一体の場合の増築と、構造上分離の場合の増築で、それぞれに構造関係規定の適用が緩和されているのがわかるかと思います。

木造住宅等の四号建築における既存不適格建築物の増築の確認申請をケース毎に図で確認してみよう

実際に木造住宅等の四号建築における既存不適格建築物の増築の確認申請を行う前に、基本的な流れを理解しておくと良いかと思います。木造住宅等の四号建築物が既存不適格建築物の場合の増築の確認申請についてはケース毎に次の図のようになります。

増築の確認申請マニュアル:木造住宅等の四号建築物における既存不適格建築物の増築の確認申請で多用されるケースⅠAを解説!

木造四号建築物の場合、平面的な増築ばかりではなく新たに2階 部分を載せる場合やその両方を実施するケースが考えられます。 また実務上は構造部材を緊結して構造耐力上一体とする方が構造上も雨仕舞の関係等も含め好ましい例が多いと思われますので、このコラムでは特に上図のケース「ⅠA」、既存建物の延床面積の1/2以下の面積の増築で構造上一体のケースにフォーカスを当て、実践的なフローをマニュアルとして活用できるように解説していきます。ただし、既存建築物の建築年度や状況により、構造耐力規定以外にも緩和される条文や遡及適用される条文が異なる場合があることを理解しておいてください。また上図で書かれている「基準時」とは、令第137条、既存建築物が建築基準法令の改正により改正後の規定に適合しなくなった時点を指しています。具体的に言うと、例えば、平成12年5月31日以前に着工した建築物において継手・仕口が令第47条に適合しない場合の基準時は平成12年6月1日(改正法施行日)となることを指しています。それでは、上記の通り、ケース「ⅠA」の場合についての実践的なフローをみていきましょう。

木造住宅等の四号建築物が既存不適格建築物の場合の増築の確認申請マニュアル【フロー1】:はじめに、対象の建築物が当マニュアルの対象の建築物か確認しましょう

増築の対象となる既存不適格建築物が木造住宅等の四号建築物であった場合に、このマニュアルが適用できる建物かどうかをまずは確認していきましょう。

この増築の確認申請マニュアルが適用される建築物

増築の確認申請マニュアルは建築基準法第6条第1項第四号に規定する次の条件の 木造住宅等建築物について適用することができます。

<適用の対象とできる建築物>

用途:一戸建て住宅など特殊建築物以外のもの

構造:木造(軸組工法、枠組壁工法など) ※混構造は除きます。

規模:2階建以下、延べ面積500㎡以下、高さ13m・軒高9m以下の規模 ※構造計算の必要な建築物、木造大規模建築物は対象外です。

増築の確認申請マニュアルが適用される建築物か確認する際の注意点

特定行政庁によっては50m2を超える増築の場合に、中間検査(特定工程)が必要な場合があることを理解しておきましょう。また、先ほど紹介した対象とする建築物以外の特殊建築物等(法第6条第1項一号、第二号及び第三号)の 取扱いについては最適建築コンサルティングにご相談下さい。

>>増築の確認申請マニュアル対象外の建築物について今すぐ相談する

木造住宅等の四号建築物が既存不適格建築物の場合の増築の確認申請マニュアル【フロー2】:対象の建築物が構造規定緩和を受けて増築するための条件を確認しましょう

次に計画の内容が構造規定緩和を受けて増築するための条件を確認していきます。先に述べた多用されることが予想されるケースⅠAの場合の増築の確認申請を対象として、その条件に該当するかを確認していきましょう。ケースⅠAの構造規定緩和を受けて増築するための条件は次の通りです。

増築の確認申請マニュアル:構造制限緩和を受けて増築の確認申請をするための条件【多用例ケースⅠAの場合】

<構造制限緩和を受けて増築の確認申請をするための条件>

(1)「既存不適格建築物」であること (法第3条第2項) →建築時の基準法令に違反している場合は対象外(法第3条第3項第一号) (※法第12条5項報告等により違反是正措置が完了している場合を除く)

(2)「耐久性関係規定」を満たしていること →令第36条第1項に掲げる構造部材等の規定に適合していること

(3)建築物全体の耐力壁が釣り合いよく配置されること →令第42条・第43条並びに第46条の規定に適合させること

(4)増改築部分は現行の「仕様規定」に適合させること →令第3章(第8節を除く)の規定及び法第40条の規定に基づく条例の構造耐力関係規定に適合させること

※新耐震基準(昭和56年6月1日)以前に建築された建物でも(現時点で新耐震基準の壁量を満たしていない場合でも)増築工事と同時に壁量追加など実施して(3)を満たす場合は 適法に増築が可能です。

増築の確認申請マニュアル:構造制限緩和を受けて増築の確認申請をするための条件【ケースⅠAに該当しない場合】

繰り返しになりますが、上の条件は多用されることが予想されるケースⅠAの場合の構造制限緩和を受けて増築するための条件となっています。他のケースの場合の条件とは異なる場合がありますので、予めご理解ください。ケースⅠAに該当しない場合の増築の確認申請についてご不明な場合は、最適建築コンサルティングにご相談ください。ご相談内容を元に調査や必要に応じて確認申請の手続きなどを行なっております。(※調査、その他申請代行の費用については計画の内容、規模によって異なります。)

>>ケースⅠAに該当しない増築の確認申請について今すぐ相談する

木造住宅等の四号建築物が既存不適格建築物の場合の増築の確認申請マニュアル【フロー3】:既存建物の建築時期を確認する

これまでに紹介した、「マニュアルの適用範囲」と「ケースⅠAの構造制限の緩和条件」踏まえた上で、次は既存建物の建築時期がいつなのかを確認していきます。既存建物の建築時期の確認の方法は次の通りです。

既存建物の建築時期の確認方法

建築確認済証、検査済証、建築確認台帳証明、登記事項証明書などを参照することで、既存建物の建築時期の確認が可能です。特に、昭和56年6月1日以降の新耐震基準の建築物として建築確認が行われているかが重要になってきます。というのも、新耐震基準を満たしている場合は原則的に既存部分の構造的改修等が必要ないからです。また、平成12年6月1日以降の建築確認/着工であれば構造関係は現行仕様規定に適合と見なせるので構造上は既存不適格建築物ではない場合が多いです。この場合は構造緩和及び既存不適格調書は不要になります。

【補足】既存建物の建築時期の確認時によく発生するトラブル

既存建物の建築時期の確認をした際に、既存建物に検査済証がないことが発覚することが多々あります。その場合はそもそも増築の確認申請ができないとされていますが、一定の条件を満たすことによって、検査済証がない建物でも増築や用途変更が進められる場合があります。今回のコラムでは詳しく触れませんが、検査済証がないことが発覚した場合のフローについては次のコラムをご参照ください。

>>既存建物に検査済証がないことが発覚したら・・・

木造住宅等の四号建築物が既存不適格建築物の場合の増築の確認申請マニュアル【フロー4】:既存建物の現況調査を行う

さきほど、平成12年6月1日以降の建築確認/着工であれば、構造緩和及び既存不適格調書は不要になると書きましたが、ごく稀にどのようなわけか、平成12年6月1日以降の建築確認を受けている建物にも関わらず、構造等が現行仕様規定に適合していない場合があることがあります。これに限らず、既存建物の現況が建築確認当時の内容と一致している、既存不適格建築物であるかを明確にする為に、既存建物の現況調査を行なっていく必要があります。

既存建物の現況調査のチェックポイント

私たち最適建築コンサルティングがⅠAのケースで既存建物の現況調査を行う際のチェックポイントとしている点は次の通りです。

<既存建物の現況調査のチェックポイント>

1)集団規定適合及び軸組・壁量・金物位置などの状態のチェック

2)構造部材の耐久性及び防腐措置等の状態のチェック

3)地盤及び基礎の種別・状態をチェック

4)屋根ふき材等の緊結方法をチェック

5)防火関係規定、内装制限、シック換気、住宅用火報などの既存部分に遡及適用される事項などをチェック

既存建物と図面を照合した際に不適合な箇所が発見された場合は、是正工事を行わなくてはならない場合があります。このような場合には、想定外の工期や費用がかかってしまうことがあることを理解しておきましょう。下記の記事では、増築の確認申請をした場合の既存不適格建築物への遡求緩和について解説しているので、このコラムと併せて読むと、よりわかりやすいかと思います。

>>増築の確認申請をした場合の既存不適格建築物への遡求緩和について

木造住宅等の四号建築物が既存不適格建築物の場合の増築の確認申請マニュアル【フロー5】:増築の設計を行う

既存建物の現況調査が完了し、図面との整合性が確認できたら、設計に移ります。増築の設計を行う際には、次の点に配慮が必要です。

増築の設計時に注意すべき点

<増築の設計時に配慮すべき点>

・構造、規模が適用範囲に該当する内容で設計する。

・既存建物の耐久性関係規定判断は、調査者及び設計者の責任になることを理解する。

・軸組構法の場合、告示四分割法にて壁量及び壁バランスの確認をする。

・構造以外の遡及適用条文について設計図書に適合の明示をする。

緩和される以外の既存建物に遡求される適用される規定に注意

既存建物令第137条の2(構造耐力)から第137条の11(準防火地域)の規定により緩和される以外の規定等は原則的に既存部分にも遡及適用されます。 例えば、防火設備(法第64条)、シック換気(法第28条の2・令第20条の8)、 階段手摺(令第25条)、(※特定行政庁によっては、住宅用火報を既存部分にも設置しなければならない場合がありますので事前に確認をしましょう。)

木造住宅等の四号建築物が既存不適格建築物の場合の増築の確認申請マニュアル【フロー6】:増築の確認申請を行いましょう。

設計が完了したら、いよいよ確認申請です。確認申請図書の作成を行う際に、「既存不適格調書」(必須)、「既存建物の建築時期を示す書類」の添付が求められますので、しっかりと準備を進めましょう。また、「施行令第46条及び平成12年告示第1352号に基づく建物全体の計算書」(壁量および壁バランスの計算書)も必要になります。これらの書類や図面等、手続きに必要な書類を揃えて確認申請を行いましょう。以上が木造住宅等の四号建築物が既存不適格建築物の場合の増築の確認申請の主な流れになります。

やっぱり、木造住宅等の四号建築物が既存不適格建築物の場合の増築の確認申請が不安だという方は最適建築コンサルティングにご相談ください。

今回のコラムでは、木造住宅等の四号建築物における既存不適格建築物の増築の確認申請について建築事業者の方向けに、関係規定緩和の内容や実践的な確認申請のフローについて解説してきました。ここまで読んでも、まだ不安が残っている方は、お気軽に最適建築コンサルティングまでご相談ください。弊社は、既存建物の法適合状況調査や検査済証がない建物の適法化、確認申請や各種許認可の手続きのサポートなど、建築事業をスムーズに進めるためのサービスを提供しております。既存不適格建築物を適切に扱った増築や用途変更などをご要望の方は、相談フォームよりお問い合わせください。

また、増築の確認申請に関連事項を網羅したいという方はこちらの記事もご参照ください。

>>増築の確認申請【フローチャート付き】:増築の確認申請を徹底解説【完全版】

建築法規に関する情報をいち早く知りたい方へ

最適建築コンサルティングのFacebookページを「いいね」、「フォロー」していただくと、建築法規に関する内容をいち早く知ることが可能です。

>>Facebookページを「いいね」、「フォロー」して最新情報の取得にご利用ください。

Page Top