コラム
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2020.04.17

増築の確認申請をした場合の既存不適格建築物への遡求緩和について

増築は新築とは異なり、既存建物をいかに適切に取り扱うことができるかが重要になってきます。この記事では、増築の基本的な流れや既存不適格建築物の取り扱いについて触れながら、増築をした場合の既存不適格建築物への訴求緩和について解説していきたいと思います。

さきに、増築の確認申請に関連する事項を網羅したいという方はこちらの記事からご参照ください。

>>増築の確認申請【フローチャート付き】:増築の確認申請を徹底解説【完全版】

増築の確認申請をする場合の基本的な流れについて理解しよう

増築の確認申請を行う場合の、基本的な流れは次のようになります。

ステップ1)既存建物の調査

ステップ2)既存の検査済証の有無の確認

ステップ3)既存の確認申請図書の有無の確認

ステップ4)増築の設計

ステップ5)増築の確認申請と確認済証の受領

この流れの中で、行政機関や所轄消防署との協議・折衝などを行なっていく必要があります。詳しくはフローチャートを、ご参照ください。

次の項目でそれぞれのステップを詳しく解説していきます。

増築の確認申請の流れ<ステップ1>「既存建物の調査」

まずはじめに、既存建物の調査を行います。既存建物の調査を行う際には、既存建物の確認申請図書と現地を照らし合わせながら、確認申請手続がされていない違法な増築箇所や用途変更箇所がないかなどを調べていきます。

増築の確認申請の流れ<ステップ2>「既存建物の検査済証の有無の確認」

次に既存建物の検査済証の有無を確認する必要があります。既存建物が検査済証を取得しているかどうかは役所などの行政機関で台帳記載事項証明書を参照することで確認できます。

もし検査済証がない場合でも国土交通省が2014年に設けた「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合調査のためのガイドライン」に基づいて、調査、報告を行うことで確認申請を行うことが可能な場合があります。

以前、こちらの記事で、検査済証がなくてお困りの方がどのような手順を踏めばよいのかをご紹介いたしました。

>>検査済証がなくてお困りの方

また、こちらの記事ではガイドラインに基づいて検査済証がない建物の活用を検討するにあたり、ガイドラインの概要と弊社で実施していることなどをご紹介致しております。

検査済証がない場合の確認申請が必要な増築、用途変更などをお考えの方は、是非この記事をご参照ください。

>>検査済証がない場合のガイドライン、法適合状況調査について

増築の確認申請の流れ<ステップ3>「既存建物の確認申請図書の有無の確認」

既存建物の確認申請図書の有無を確認しましょう。既存建物の確認申請図書がない場合は、既存建物の竣工図や構造図などの既存図面を用いて建築基準法に適合するかどうかを確認する必要があります。場合によっては、実測調査を行い図面の復元などを行なっていくこともあります。このような場合には、費用や時間といったコストが余計にかかってきますので、注意が必要です。確認申請図書がない場合は、指定の確認検査機関に事前協議を行い、どういった手続きを行う必要があるかしっかりと確認しながら進めていくことが重要です。

増築の確認申請の流れ<ステップ4>「増築の設計」

ここまでの手順を踏んだら、いよいよ増築部分の設計を行うことができます。増築の設計を行う場合、増築部分のみの法適合性が意識されがちですが、確認申請を行う際は敷地全体が建築基準法に適合している必要があります。また、所轄消防署との事前協議を行い設計内容に不備がないかなどの確認を行なっていきます。

増築の確認申請の流れ<ステップ5>「増築の確認申請と確認済証の受領」

増築部分の設計が完了したら、確認検査機関に審査をしてもらいます。検査機関から指摘事項がある場合はそちらを修正し、最後に所轄消防署から同意が得られれば、確認済証が交付されます。

以上が増築の確認申請を行う場合の基本的な流れになります。特に確認申請が必要な増築を行う場合、既存建物に検査済証があるか、図面等が残っているかということが非常に重要なポイントとなることを理解しておくことが重要です。

既存不適格建築物の取り扱いについて

次に、増築をする際に既存建物が現行の建築基準法に適合していないことがわかった場合どのように「既存不適格建築物」を取り扱っていくのかということについて解説していきます。

既存不適格建築物とは一体何かということはこちらの記事で確認してください。

>>違反建築物と既存不適格建築物の違いについて

増築する場合にも既存建物は現行の建築基準法に適合させなくてはならない!?

増築する際は既存の建物についても現行の建築基準法に適合するように設計しなくてはなりません。これはどういうことかというと、既存建物の調査を行い、既存建物が現行の建築基準法に適合していない、「既存不適格建築物」だと判断された場合、直ちに是正、改修等の工事を行い、現行の建築基準法に適合させなければならないということです。

もちろん緩和条件もあります。このあとの「増築をした場合の既存不適格建築物への遡求緩和について」では、既存不適格建築物と判断された場合であっても、一定の緩和条件を満たすことで既存不適格建築物のまま維持できることについて解説していきますが、増築をする際には前提として既存建物も現行の建築基準法に適合させる必要があるということを理解しておきましょう。

検討している増築が「別棟増築」か「同一棟増築」か、それぞれの場合で既存建物に遡求する条項が異なることを理解しよう。

増築を行う場合、別棟増築か同一棟増築かのそれぞれの場合で遡求される建築基準法の規定は簡単に解説すると以下のように異なります。

・別棟増築の場合、建築基準法の集団規定が遡求。

・同一棟増築の場合、建築基準法の集団規定と単体規定が遡求。

集団規定とは、建築基準法のうち市街地の環境整備を目的とする規定をいい、用途地域や建物高さ、防火地域などの制限がこれに該当します。 一方、単体規定とは建物単体に関わる規定で建物の安全性や居住性などを確保する目的で定められ、防火避難や採光、換気、構造などの規定がこれに該当します。

検討されている増築が、別棟増築に該当するのか、または同一等増築に該当するのかについては次の項目で確認していきましょう。

別棟増築とは?

別棟増築とは既存建物の他に、同一敷地内に用途上不可分の建築物を増築する場合のことを指します。「用途上不可分」というのは、例えば、戸建住宅がすでに立っている敷地に屋根付きの駐車場を増築する場合や、同じ敷地内に同一の管理者で機能上密接に結びついている作業所の増築をする場合など、それぞれの建物ごとに敷地を分けて離してしまうと建物の用途が成立しなくなる場合のことを指します。

同一棟増築とは?

同一棟増築は既存建物と増築部分が接続されている増築のことを指します。建物の外観も一体に見える増築などはこの同一等増築に該当します。

「別棟増築」、「同一棟増築」をする場合に気をつけたいこと

別棟増築、同一棟増築をする際に注意したいのが、既存建物の竣工当時から都市計画情報に変更がないかどうかです。竣工当時には建築基準法や都市計画法に適合していても、途中で法改正などが行われるなどして、現行の建築基準法や都市計画法に適合しなくなってしまっている場合があります。用途地域、防火地域など都市計画情報に変更がないか十分に確認を行うことを覚えておきましょう。また、同一棟増築の場合では建物全体で現行の建築基準法に適合している必要があります。例え、増築部分の床面積が少ない場合でも、既存建物を改修しなくてはならないケースが発生する場合もあります。増築の際は既存建物も含めて法適合条件を満たすことを意識して行うことが非常に重要です。

それではどのように既存建物が既存不適格建築物であることを確認すればよいのでしょうか。

既存建物が既存不適格建築物かどうか確認するには法的な専門知識が必要!?

既存建物が既存不適格建築物かどうかを確認するには、確認申請図書や、確認申請図書がない場合などは竣工図などを参照し既存建物のチェックを行なっていくことで、法適合性の確認を行ないます。しかしながら、この既存建物の法適合性の確認には高度な法的な専門知識を要するため、一級建築士事務所であってもなかなか確認することが難しいのが現状です。増築を検討されている方で、既存建物が現行の建築基準法に適合しているか調べたい方はこの機会にぜひ私たち、最適建築コンサルティングにご相談ください。また、既存不適格建築物であることが確認された場合にどの部分を改修する必要があり、どの部分に遡求緩和が適用され既存不適格建築物として維持できるのかの判断を行なっていくこともコストや工期を正確に判断する上で重要になってきます。次の項目では、増築をした場合の既存不適格建築物への遡求緩和について確認の方法などを解説していきます。

増築した場合の既存建築物への遡求緩和について

先にも触れましたが、必要な調査等を行い、既存建物が既存不適格建築物であると判断された場合に、改修工事を必要とする場合と政令で定められた一定の条件を満たすことで既存不適格建築物として維持できる場合があります、ここでは、一定の条件を満たすことで使える遡求緩和について、どのように確認していけば良いのかを解説していきます。

既存不適格建築物の遡求緩和については建築基準法86条の7を確認しましょう。

既存不適格建築物の緩和が適用できる条項については、建築基準法86条の7を確認すること判断することが可能です。以下が法文の内容になります。

<既存の建築物に対する制限の緩和>

第三条第二項(第八十六条の九第一項において準用する場合を含む。以下この条、次条及び第八十七条において同じ。)の規定により第二十条、第二十六条、第二十七条、第二十八条の二(同条各号に掲げる基準のうち政令で定めるものに係る部分に限る。)、第三十条、第三十四条第二項、第四十七条、第四十八条第一項から第十四項まで、第五十一条、第五十二条第一項、第二項若しくは第七項、第五十三条第一項若しくは第二項、第五十四条第一項、第五十五条第一項、第五十六条第一項、第五十六条の二第一項、第五十七条の四第一項、第五十七条の五第一項、第五十八条、第五十九条第一項若しくは第二項、第六十条第一項若しくは第二項、第六十条の二第一項若しくは第二項、第六十条の三第一項若しくは第二項、第六十一条、第六十二条第一項、第六十七条の三第一項若しくは第五項から第七項まで又は第六十八条第一項若しくは第二項の規定の適用を受けない建築物について政令で定める範囲内において増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替(以下この条及び次条において「増築等」という。)をする場合(第三条第二項の規定により第二十条の規定の適用を受けない建築物について当該政令で定める範囲内において増築又は改築をする場合にあつては、当該増築又は改築後の建築物の構造方法が政令で定める基準に適合する場合に限る。)においては、第三条第三項第三号及び第四号の規定にかかわらず、これらの規定は、適用しない。

つまり、上記に記載されている条項に該当しない場合は遡求緩和がされないということになり、増築時に既存不適格部分について改修工事を行う必要があります。逆に言うと、上記に記載されている条項のなかで政令の定める条件を満たす場合は遡求緩和が可能になり、既存不適格建築物の状態を維持することができます。緩和条件については“建築基準法施工令 第八章 既存の建築物に対する制限の緩和等”に記載されている内容を参照することで確認できます。

ここで、実際の遡求緩和条件について比較的わかりやすいものを2つご紹介します。

<法26条:防火壁>
(防火壁関係)
第百三十七条の三
法第三条第二項の規定により法第二十六条の規定の適用を受けない建築物について法第八十六条の七第一項の規定により政令で定める範囲は、増築及び改築については、工事の着手が基準時以後である増築及び改築に係る部分の床面積の合計が五十平方メートルを超えないこととする。

<法27条:耐火建築物としなければならない特殊建築物>
(耐火建築物等としなければならない特殊建築物関係)
第百三十七条の四
法第三条第二項の規定により法第二十七条の規定の適用を受けない特殊建築物について法第八十六条の七第一項の規定により政令で定める範囲は、増築(劇場の客席、病院の病室、学校の教室その他の当該特殊建築物の主たる用途に供する部分以外の部分に係るものに限る。)及び改築については、工事の着手が基準時以後である増築及び改築に係る部分の床面積の合計が五十平方メートルを超えないこととする。

紹介した、法26条と法27条を見てみると、増築部分にあたる床面積の合計が50㎡を超えなければ遡求緩和が適用されることとなり、既存不適格建築物の状態を維持することができると判断できます。

このように増築をした場合の既存不適格建築物に対する遡求緩和については、建築基準法を参照しながら、都度、既存不適格建築物に該当する部分について判断を行なっていく必要があります。単純に増築をしようと思っても、既存建物の取り扱い方を間違ってしまうと、確認申請が下りなかったり、余計な改修コストがかかってしまう場合があります。増築をする際には既存建物を法的な根拠に基づいて適切に判断していく能力が必要になり、その既存不適格建築物に対する法的な判断を行なっていくことは、大変な労力が必要となります。また、次のようなチェックリストを参照しながらチェックを行うことも可能です。

確認申請が必要な増築をする際には最適建築コンサルティングにご相談ください!

私たち最適建築コンサルティングは既存建物の法適合性の確認や検査済証がない建物の再生を得意としたサービスを提供しています。増築をご検討の方で既存建物の法適合性がわからない方や、余計な改修工事などを行わず、スマートな工事を行いたい方などは、ぜひこの機会に私たち最適建築コンサルティングにご相談ください。

>>【関連記事】検査済証がない建物を用途変更や増築をする難易度について

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