コラム
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2019.02.08

検査済証がない建物を用途変更や増築をする難易度について

検査済証がない建物といっても様々なケースがあります。建物の直面している状況によって用途変更や増築をする難易度が大きく変わってきます。その難易度に比例して、費用や期間も変わってきますので参考にしていただければと思います。

CASE1検査済証がない、確認申請書類、図面、構造計算書を所持している場合(増築や用途変更の難易度☆)

建物の図面や書類は残っているけど、検査済証だけがない。相談していただく中ではこの状況が一番多い状況です。考えられる理由としては、検査済証を紛失してしまった、建物としてはしっかり建てたのだけど慣習として完了検査を受けていなかったことが考えられます。今では信じられないことですが、H10年の統計では完了検査を受けている建物は60%しかありません。実に40%以上が検査を受けていない状況だったのです。現在と違って検査済証がなくても銀行の融資も実行されていたことも関係していると思います。
逆にH20年代で検査済証がない場合は、どこか違反部分がある場合が多いです。違反の中でも、高さや建ぺい率、容積率などの集団規定よりも、一番多いのは建具を防火戸にしていないなどの一般の人からは、わかりにくい部分が多いです。
話が少しそれましたが、このような建物は検査済証はないけれども、既存不適格といわれる状況であることが多いので比較的適法化の難易度は低いです。

想定される業務内容:構造調査、法適合調査書の作成

CASE2検査済証がない、確認申請書類がない、図面、構造計算書を所持している場合(増築や用途変更の難易度☆☆)

こちらもよくあるケースですが、確認申請を出しているか、出していないかの調査からすることになります。調査をしていくと実際は確認申請を出しているケースが多く、お客様が失くしてしまったか、最初から工事関係者から渡されていなかったケースが多いです。
様々な方面から調査した結果、確認申請書類を探し出せなかった場合は、確認申請図面を復元していくことになります。私どもの経験からいくと竣工図面等が現存している場合は、特別な事情を除き、まず確認申請を行っていますので、確認申請書類がなくても竣工図、構造計算書等がある場合は復元が比較的しやすく、適法化の難易度も比較的低いです。

想定される業務内容:確認申請図面復元、構造調査、法適合調査書の作成

CASE3検査済証がない、確認申請書類がない、図面はあるが、構造図、構造計算書がない場合(増築や用途変更の難易度☆☆☆)

検査済証、確認済証がない、建物の竣工当時の図面はあるが、構造計算書だけがないもの。こちらの場合は、構造計算書が竣工図と別とじになっていることが原因で起きていることが多いです。当時の感覚として竣工図さえあれば、建物を保持していく上では問題ないと思われていたことも要因かと思います。

このような建物の場合は、確認申請図面の復元、構造調査、構造計算書復元など、難易度が高くなってしまいます。ただし構造図があるのならば、構造調査は構造図がない場合と比べてさほど難しくはありません。全く手探りで行う場合とある程度想定されている場合では、やはり難易度が大幅に変わってくるからです。

想定される業務内容:確認申請図面復元、構造調査、構造計算書復元、法適合調査書の作成

CASE4検査済証がない、確認申請書類がない、図面、構造計算書の全てがない場合(増築や用途変更の難易度☆☆☆☆)

検査済証がないのはもちろん、建物の竣工当時の確認書類、図面や構造計算書、写真、全てがないもの。こちらの場合は、オーナーチェンジがおこなわた建物に多いです。オーナーが変わっていく過程で書類や図面が紛失してしまっていることが多いです。中規模の建物に多いのが特徴です。このような建物の場合は下調べに非常に時間がかかります。行政、不動産、前オーナー、施工会社、設計事務所、その他、様々な流通経路から書類関係を探していくことから始まります。本当に確認申請を出していないのか、検査済証を受けていないのか。竣工図面が少しでも残っていないのか、下調べに時間がかかる一方、中規模の建物の場合、探すと検査の痕跡が残っている場合もあり、一発逆転で検査済証を受けていたことがわかったりすることもあります。
とはいえ、探しても書類が見つからない場合は、図面の復元、構造調査、構造計算書復元など、非常に難易度が高くなってしまいます。特に鉄筋コンクリート造の場合、配筋の探査箇所が多くなってしまい、調査の精度も含めて、非常に手間がかかってしまいます。

想定される業務内容:確認申請図面復元、構造図復元、構造調査、構造計算書復元、法適合調査書の作成

検査済証がない建物を用途変更や増築をする難易度について(まとめ)

20年くらい前の事例になると、建設会社、設計事務所、不動産会社、当時の会社、担当者がいないことが多く書類も残っていないことが多いです。各行政も対応がバラバラで、建築確認申請の記載台帳や計画概要書も保存してる期間が違ってきています。私たちはそういった記憶の断片をつなぎあわせるような、いわば探偵のようなことも行い、当時の建物の状況を把握していきます。
つまり適法化までの難易度は確認済証、検査済証のあるなしだけではなく、実は既存の建物の資料である、図面、構造計算書、写真、エレベーターの定期報告書、特殊建築物の定期報告書など、建物の履歴がわかる資料が残っているかどうかが重要です。
調査した中には信じられないくらい悪質な建物も多いですが、実際は完了検査を怠っていただけで当時建てられた建物としては問題のない建物が多いです。まずはお気軽にご相談していただければと思います。

「用途変更をしたいが、何から始めていいかわからない」という方のために、これまで最適建築コンサルティングが書いてきた用途変更に関する記事の内容を要約して解説しているまとめ記事がありますので、この機会に振り返っていただけると内容がより理解しやすいかと思います。

>>「用途変更の確認申請を理解しよう1<一括解説>」

増築の確認申請で一番多い勘違いが10m2以下なら確認申請は必要ないという勘違いです。例えば防火地域に指定されている場合は1m2でも増築がともなう場合は確認申請が必要になります。その他にも注意点が多いので増築の確認申請の必要の有無について一括でまとめました。増築の確認申請が必要かどうかわからない方は参考にしてみてください。

>>「増築の確認申請【フローチャート付き】:増築の確認申請を徹底解説【完全版】」

「増築、用途変更をしたいのだけど確認済証、完了検査済証がなくて困っている」という方のために、検査済証がない場合の確認申請書取得までの流れについてまとめてありますので、この機会に振り返っていただけると内容がより理解しやすいかと思います。

>>「検査済証がなくてお困りの方」

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