事例紹介
CASE STUDY

工場の業務用エレベーター増築(内部)、大規模な模様替えの確認申請

検査済証がない建物は、どのようにしてエレベーターを増築する確認申請ができるのか?

このプロジェクトは、茨城県の検査済証がない工場用途にエレベーターを新設したいとの要望がクライアントからありました。こちらのコラムでもご紹介させていただいておりますが検査済証がない場合は、ガイドラインを利用した法適合調査を行い適法であることで、新たに確認申請を行い確認済証を取得することができます。
エレベーターを新設する場合は、内部に設けるのか、外部に設けるのかの違いは単に使い勝手や計画上の問題と考える方が多いですが、建築基準法では外部に新設する場合は増築に該当し、内部に設ける場合はエレベーターの確認申請のみとなるため、既存訴求の関係等から諸条件によっては、内部に設けた方が良い場合と、外部に設けた方が良い場合があります。どちらにもメリット、デメリットがありますので、そういった部分も比較して、私たちはクライアントに提案しています。
またエレベーターを新たに設ける場合は、外部に設ける場合はエキスパンションジョイントを設ける場合が多く、内部に設ける場合は、内部に新たに柱を設けることが多く、基本的に本体とは別構造として計画することが多いです。今回の場合は、既存用途が工場のため用途変更が生じない計画であることと、建物の法律上の諸条件を考えるとエレベーターを内部に設けた方が良いと判断し計画を進めていきました。

<事業データシート> 構造:鉄骨造 規模:地上2階建 敷地面積:1300㎡ 建築面積:880㎡ 延床面積:1500㎡ 既存用途:工場 確認済証:取得済 検査済証:未取得 目的:工場にあらたにエレベーター増設

既存建物にエレベーターを増築する場合、まずは検査済証があるかどうかを確認します。

法適合調査までの流れとして、まずは物件購入前にクライアントから事前調査の依頼がありました。事前調査では隠蔽部分(目視で調査できない箇所)をのぞいて、他に違反がないか調査しました。調査の結果、違反している部分が見つかりましたが、今回工事で是正できる範囲内の内容でした。事前調査をすることにより、違反部分を事前に把握することにより前オーナー(売り手)に対しても販売価格の見直しを考慮いただくこともできますし、前オーナーとしてもトラブルなく新しいオーナーに引き継ぐことができます。今回の場合は物件を購入したいオーナーからの依頼ですが、物件を販売したいオーナーからも調査の依頼がよくあります。

今回の建物の場合は構造計算書はありませんが、他の図面(建築、構造、設備)が全てそろっており、台帳記載証明書、計画概要書の内容と建物の高さや面積に一部違反がありましたがエレベーターの新設時に十分対応できる内容でした。

クライアントは建物購入することを検討時に建物に検査済証がないことが発覚しました。今回のようにエレベーターをあらたに新設する場合は、エレベーターの確認申請が必要になります。
検査済証がない場合は増築、用途変更など確認申請をともなう工事が基本的にはできませんが、法適合調査を行い適法とみなされた場合、確認申請に進むことができあらたに確認済証を取得できることができます。私たち最適建築コンサルティングでは数多くの事例を経験しておりますのでまずはご相談ください。

検査済証がない建物を活用するためのガイドラインを用いて既存不適格建築物であることを証明する

エレベーターの新設を行うために、まずは敷地条件を確認しましょう

まず私たちが行ったのは建物が該当するエリアの敷地条件の確認をしてですが、今回の場合は用途は従前と同じ、工場用途ですので基本的には問題ありません。 既存建物の用途地域やが用途変更を行える地域か確認することです。この物件の該当するエリアの用途地域、防火指定は以下の通りでした。

用途地域:準工業地域

防火地域:法22条地域

エレベーターの新設を行う際にチェックすべきその他の敷地条件に関する補足

上記の他にも立地条件によっては接道する道路の幅員や高度地区、日影規制などに該当する場合があります。用途地域、防火地域などは役所のホームページでも確認が可能です。(一部地域では確認できない場合もあります。その場合は直接役所に問い合わせて確認することができます。)今回の敷地では、建物が建てられた当時と用途地域、容積率、建ぺい率、高さ制限などが変わっていませんでしたが、変わっている場合もあるので注意が必要です。
指定確認検査機関が求める要件を満たす調査を行うように指導を受けました。それでは、実際にどのような調査を進めて行ったのか解説していきたいと思います。

エレベーターは内部に設けるべきか外部に設けるべきかの検討

エレベーターを新設に設けることを考える場合は外部に設けるのが簡単です。新設のエレベーターと既存建物をエキスパンションジョイントで構造別とすることができるためです。ただし利用者の方の使い勝手や増築にした場合の建物全体としての法的な考え方を考慮すると必ずしも外部に設けることが正解とは限りません。
今回の場合は敷地の利用の問題や利用者動線の観点から内部に設けることに決定しました。
内部にエレベーターを設ける場合は既存の構造である梁やブレースを撤去することになるため、構造設計者と構造的検討を行いながら適切な位置に設けることが必要になってきます。
またこの時点でエレベーターの寸法や重量を検討する必要があるため、エレベーター会社とも協業して詳細を詰めていくことが重要になってきます。
今回は梁の移動と補強を行うことによって、既存建物の内部にエレベーターを設ける計画としました。

検査済証がない建物をガイドラインを用いて既存不適格建築物であることを証明する際に求められた調査内容

検査済証がない既存建物を活用する為のガイドラインを用いた既存不適格建築物の証明の為に指定確認検査機関から要求された調査項目は以下の通りでした。

・図面が当時の建築基準法を満たしていること。

・足りない図面を復元すること。

・図面通りに施工が行われていること。

・構造躯体の強度に問題がないこと。

検査済証がない建物の現況調査を行います。

1)現場調査

敷地条件が確認できたら、現場調査では主に実測を行いながら、違反箇所の確認を行なっていきます。違反箇所としてよくあるのが、違法増築や建物が防火地域、準防火地域に該当しているのにもかかわらず防火要件を満たしていないこと火災時の避難経路が確保されていない、あとから屋根や倉庫を増築してしまうことなどがあります。また、建てた当時は合法であった部分を、所有者が改修やリフォーム等を行うことによって違法になってしまう場合もあります。今回の場合も網入りにしなければいけない部分の窓を、網なしに改修してしまっている場所が一部ありました。
今回のように大きな工場のような場合には安全の観点からも特に建物のことを理解している担当者が必要であると同時に、建物の取扱説明書のようなものが必要だと強く感じます。建物の変更して良い場所と安全上ダメな場所の判断ができるようになりますので、ビルや工場など特殊建築物を建てる場合は後々のメンテナンスやリフォームを考慮して、施工会社や設計事務所に建物引継書や中長期の保全計画書の作成依頼をすることが重要だと思います。

2)机上調査・図面の復元

今回の建物は竣工図がありましたが、一部破損して見えにくい部分があったので、実測した内容をもとに部分的に図面を復元していきます。ここで確認すべきことは確認申請時から面積が増えていないか、建物の高さは守られているかなどの集団規定の違反です。違反があった場合は建物の一部解体などの工事を伴う場合もありますので、注意が必要です。

3)構造調査

法的な状況を確認したあとは、建物の構造に問題がないかを確認していきます。必要に応じて天井や壁を一部壊して目視にて確認します。今回の建物は鉄骨ラーメン構造の2階建です。鉄骨造の場合はUT検査という超音波による鉄骨柱と梁の溶接部分の確認を抜き取りで必要になります。UT検査では鉄骨造の古い建物の場合はNGになる場合も多く、梁の補強や溶接部分のやり直し等の必要が出てくることがあります。
他にも基礎梁部分の寸法を測り、超音波による配筋調査とコア抜きによる強度圧縮試験、中性化試験などを行いました。
鉄筋の調査に関してはピッチに関しては超音波で判別するのですが、細かい径に関しては判別するのが非常に難しいため一部はつって鉄筋径を確認しております。
構造調査に関しては構造設計事務所と協業して行なっているため、毎回、調査範囲や箇所等に関しては確認申請機関担当者、構造設計者、調査員と打合せを行なって決めています。
この構造調査は構造図がないと難易度が上がり調査箇所も多岐にわたるため非常に大変になってきます。また私どもの事務所では構造図がない場合は構造計算書も復元をしているため費用としても高くなってきます。構造図を所持しているかどうかで調査の方針が変わってくるため、建物を購入時はその部分も注意することが大事になってきます。

ガイドラインを利用して検査済証のない建物の法適合状況調査報告書を取得する

ここまでの内容を調査結果としてまとめて、第三者検査機関である指定確認検査機関に法適合状況調査を申請することによって、検査機関の検査員がこちらの提出した資料をもとに現場検査にきます。そして問題がないようであれば建築基準法関係規定に適合していることが証明されます。もう少しわかりやすく説明すると、もう一度完了検査を受けるようなイメージです。今回のプロジェクトでは違反部分や不適合部分はありましたが、事前調査で想定していた範囲内のためそのままエレベーターの確認申請に進むことができました。

検査済証がない建物の現況調査が完了すれば、エレベーターの増築の確認申請に向けて計画を進めていくことが可能になります。

今回のプロジェクトでは、法適合調査を経てエレベーターの新設に進むことができました。私たちに相談が多い事例の一つにエレベーターの新設があります。検査済証がなくてエレベーターを新設できなくて諦めていた方は、一度ご相談していただければと思います。

このように検査済証がない建物を再生するのは、新築の設計と同様に手間と時間がかかる作業が多いですが建物が再生されることによって新たにエレベーターの申請等の確認申請に進むことができます。また、新たに確認申請を行なうことで新たに確認済証を取得することにもつながります。これは物件の評価やコンプライアンスの観点において大きな価値を持ちます。
検査済証がない建物の用途変更、確認申請をご希望の方はぜひ最適建築コンサルティングにご依頼ください。

>>検査済証がなくてお困りのかた

また、増築の確認申請に関連する事項を網羅したいという方はこちらの記事もご参照ください。

>>増築の確認申請【フローチャート付き】:増築の確認申請を徹底解説【完全版】

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