コラム
COLUMN

2018.11.27

検査済証がない建物を増築、用途変更する際に行う躯体調査について

検査済証がない建物のガイドラインを利用した調査について

検査済証がない場合は原則的に増築、用途変更を行うことはできませんが、国土交通省が2014年に設けた「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合調査のためのガイドライン」に基づいて、調査、報告を行うことで確認申請を行うことが可能な場合があります。

>>「検査済証がなくてお困りのかた」

弊社では調査を行う過程で、図書や検査記録に不備がある場合には、必要に応じて次のような躯体調査、及び図書の復元を行っています。

<躯体調査>
・コンクリートコア抜きによる圧縮強度試験及び中性化深さ試験
・鉄筋探査
・UT検査による鉄骨部分の溶接箇所のチェック
<図書の復元>
・確認申請図がない場合などの図面復元
・構造計算書の復元
この記事では、上記の各項目の概要や流れについて解説していきたいと思います。

躯体調査:コンクリート調査

既存建物のコンクリート部分に対して躯体調査を行う際には、主に次の二つの調査を行います。

①コンクリートコア抜きによる圧縮強度試験及び中性化深さ試験
②鉄筋探査

上記の二つの調査は既存建物の図書や検査報告に不備がある場合に、既存建物がS造、木造の場合は基礎を、RC造の場合は基礎・壁のコンクリート部分について行うことが多いです。次項でそれぞれの調査の概要とその流れについて確認していきましょう。

コンクリートのコア抜きによる圧縮強度試験及び中性化深さ試験について

コンクリートのコア抜きとは?
コンクリートに穴を開け円筒形状のコンクリートコアを供試体として採取する工事のことです。採取された供試体を用いてコンクリートの強度を調べるための「圧縮強度試験」やコンクリートの劣化具合を調べるための「中性化深さ試験」を行います。
圧縮強度試験とは?
コア抜きで抜き取った供試体から圧縮強度を求める試験です。 コンクリートは圧縮方向の力に強い材料です。建物の構造の安全の観点からも設計されたコンクリートの圧縮強度以上の強度が出ているかが重要になってきます。コンクリートの強度を求める場合は、圧縮強度を試験します。
中性化試験とは?
コンクリートの中性化度合いを調べる試験です。コンクリートはアルカリ性で、内部の鉄筋の保護も担っていますが、空気中の二酸化探査と反応して中性化されると、中の鉄筋が錆び、コンクリートの建物の劣化に繋がります。この試験では、試験対象となるコンクリートのコアなどにフェノールフタレイン溶液をかけ、その反応を見て中性化の深さを調べます。

コンクリートコア抜きによる圧縮強度試験及び中性化深さ試験の流れ

1、採取位置の確認
まずは、コア採取位置の確認を行います。また、コアの採取箇所や採取本数については、各自治体の方針によって異なりますが、建物のX方向、Y方向の計2箇所からそれぞれ3本ずつコアを採取することが多いです。また、コア抜きは専用の機械を使って、コンクリートに穴を開けます。そのため、コンクリート片などが周囲に飛び散るのを防ぐために養生を行います。
2、鉄筋探査
コア抜きをするにあたり、鉄筋の切断を避けるため、鉄筋探査を行い鉄筋位置の確認をします。
3、コア採取
コンクリートコアを採取します。一般的には湿式と呼ばれる方法で専用の機械と水を使いながら穴を開けることが多いです。建物の構造や状況によって求められる寸法は異なりますが、75φまたは100φの寸法になることが多いです。
4、モルタルによる補修
コア抜きで開いた穴をモルタルで補修します。補修後は養生を撤去し、コア抜きを行なった際に出たコンクリート片や泥などの清掃を行います。
5、圧縮強度及び中性化試験
供試体を第3者の試験機関へ提出し、圧縮強度試験、中性化試験を行います。試験後に試験結果に基づいた報告書の作成を行います。
コンクリートの壁面のコア抜き工事は、場所によっては仕上げが痛むため、採取位置が重要になってきます。そのため、既存建物の現地調査時にコアの採取位置についてお客様とも協議が必要になります。
続いて、鉄筋探査についてみていきましょう。

鉄筋探査について

図書や検査報告に不備がある場合には、鉄筋の位置が配筋図と同じかどうかなどを確認したりするために鉄筋探査を行います。また、前述のように鉄筋切断や埋設物の損傷を防ぐためにコンクリートの内部に入っている鉄筋の位置などを調べる際にも行います。

鉄筋探査の流れ

1、調査位置・箇所の決定
まずは調査位置と箇所を決めていきます。この鉄筋探査についても建物のX方向、Y方向の2面を対象に調査をすることが多いです。
2、探査機によるデータ採取と解析
電磁波レーダー法、及び電磁波誘導法によるデータ採取と解析を行います。特に電磁波レーダー法では、かぶり厚やピッチなどを計測し、電磁波誘導法では、鉄筋径を計測します。例えば木造の基礎の鉄筋径はd10とd13で構成されている場合が多いです。電磁誘導法のデータ採取でも径が判別しない場合や自治体の方針によっては「はつり」による目視確認を行う場合もあります。
3、報告書作成
採取、解析されたデータに基づき報告書の作成を行います。

躯体調査:鉄骨

既存建物の鉄骨部分には、主に次の調査を行います。

①UT検査による鉄骨部分の溶接箇所のチェック
既存建物に鉄骨が用いられている場合には必要になることが多いので、こちらについても調査の概要とその流れについて確認していきましょう。

UT検査による鉄骨部分の溶接箇所のチェックについて

UT検査とは
既存建物の鉄骨部分における溶接箇所に対して損傷はないかなどを調べる検査です。UT検査は超音波探傷試験と呼ばれ、溶接箇所に超音波を当てて音波の跳ね返りによって損傷のチェックを行います。

UT検査による鉄骨部分の溶接箇所のチェックの流れ

1、調査箇所の決定
調査箇所は鉄骨部分の溶接箇所になります。主に柱—柱部、柱—梁部の溶接継手部及び、高力ボルト接合部などが調査箇所として選ばれます。
2、検査機によるデータ採取と解析
調査箇所が決まったら、UT検査を実施します。上記の調査箇所に対して超音波をあて、そのパルスの跳ね返りをみて溶接不良の確認を行なっていきます。
3、報告書の作成
UT検査で得られたデータに基づき、報告書を作成します。
UT検査を行う際には、建物の仕上げを剥がして、調査箇所のサンプリングを行うことがありますが、調査後の復旧などが大変になることもあるので、天井の点検孔付近の鉄骨からサンプリングを行うことが多いです。

図書の復元について

図書に不備がある場合には既存建物の実測を行うことにより、図書の復元を行います。復元が必要になってくるものは、間取りだけではなく、窓の大きさ、種類、天井高、建物の高さ、敷地境界線からの建物の位置、仕上げなど多岐に渡り調査を行います。

確認申請図の復元について

確認申請図は建物の条件などによってもことなりますが、私たちが主に復元する図面については次のものが多いです。

・配置図
・平面図
・立面図
・断面図

このほかにも条件によっては復元を行う必要があるものもありますので随時、行政や検査機関と協議を行います。

構造計算書の復元について

既存建物の条件によっては、構造計算書がない場合もありますが、復元の必要がある場合は現地調査や図上調査を行い、構造計算書の復元を行なっています。
そのほかにも、検査済証、確認済証に代わる書類の再発行サービスも行なっておりますので、ご希望の方は是非ご相談ください。
サービス内容:
・建築法規の無料相談
・台帳記載証明書の取得
・計画概要書の取得
こんな方におすすめ
・そろそろ増築の準備をしたい
・建物の用途変更を考えている
・お手軽に建物の相談をしたい

>>「検査済証、確認済証の再発行サービスはじめました(代替書類)」

検査済証の再取得に向けて

検査済証がない場合の用途変更や増築にあたり、必要な場合に行う躯体調査にはある程度の期間を見込む必要があることを理解しておいてください。調査自体にかかる日数は2〜3日程度と比較的短いことが多いですが、試験の結果と報告書が出てくるまでにはある程度の時間を要します。そのため、随時スケジュールやコストなどを確認しながら進めていく必要があります。
私たち最適建築コンサルティングは、設計事務所としての技術力、法規の知識とデザインのプロとしての市場分析力、提案力を活かして既存建物が抱える様々な問題を解決し、現代社会に貢献しております。
これまでご紹介した調査や検査済証がない建物の増築、用途変更をご希望の方は私たちにご相談ください。

また、検査済証がなくて用途変更確認申請や増築確認申請をご検討されている方は、それぞれの場合の確認申請について理解しておくことが重要です。

>>「住宅の増築における確認申請や費用などについて」

>>用途変更の確認申請など、用途変更に関すること一括解説

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