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2018.12.30
用途変更の確認申請を理解しよう2<規模と用途>
目次
用途変更の確認申請が実は必要だった!?
建物を新築した場合、必要な手続きとして、一般の人たちにも確認申請の手続きが必要という事は知られていると思いますが、実はテナントで入居した場合でも用途変更の確認申請の手続きが必要になるときがあります。
例えば、下記のような条件の場合
1、建物全体を用途変更(コンバージョン)して共同住宅からホテルに変更したい。
2、床面積200m2を超える事務所物件を飲食店にしたい。
3、床面積200m2以下の事務所物件を飲食店にしたい。
1、2の条件の場合は用途変更の確認申請が必要になります。
3の条件も場合によっては確認申請が必要になってきます。
200m2以下という数値の言葉だけが一人歩きしているため
3の条件の場合でも状況によっては確認申請が必要なことを理解していない
不動産会社や建築の専門家もいるため注意が必要です。
では具体的に用途変更の確認申請とは、どんなものか見ていきましょう。
「用途変更をしたいが、何から始めていいかわからない」という方のために、これまで最適建築コンサルティングが書いてきた用途変更に関する記事の内容を要約して解説しているまとめ記事がありますので、この機会に振り返っていただけると内容がより理解しやすいかと思います。
確認申請が必要な用途変更を理解して確認済証を取得しよう
用途変更の確認申請手続きが必要となる規模
建物の用途を変更して特殊建築物にする場合
・規模が200㎡以内の変更
・類似用途への変更
平成31年6月26日に施行された「建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)」により、建築基準法第6条第1項第一号建築物の面積要件が100m2超から200m2超に変わりました。
上記の2つの場合を除き、用途変更確認申請の手続きが必要になります。
類似用途への変更は後述します。
ここで勘違いをしてしまうのが規模が200m2以内の用途変更です。
簡単な事例を交えて説明します。
3階建てのビル(各階床面積:190m2、ビル延べ床面積:570m2)、建設当時の各階の用途が事務所の場合
2階をテナント入居者の関係で事務所から飲食店に用途を変更した場合は確認申請は必要ありません。
→190m2の変更のため確認申請は必要ありません。
1階もテナント入居者の関係で事務所から飲食店に用途を変更した場合は確認申請が必要になります。
→1階のテナントの面積は190m2ですが、2階も用途変更をしているため合算で380m2となり
確認申請が必要となります。
ここで注意したい事が2点あります。
一つは最初の用途変更床面積は200m2以下のため確認申請の手続は必要ありませんが、建築基準法には準拠する必要があるという事です。
もう一つは建築基準法での確認申請の用途変更手続は用途変更の合算で考えるため、仮に階でまたがったとしても
用途変更の手続が必要になってくるという事です。
以上のことから、建物の管理者は入居するテナントの状況を把握しておく必要があります。
本来なら建物管理を任されている、不動産管理会社が手続きを理解する必要がありますが
現状は用途変更の手続きに関しては、入居するテナント業者のモラル任せとなっている事が多いように感じています。
防災の観点からも特殊建築物の種類によっては必要な建築設備も変わってきます。
健全な管理と建物の価値を維持するためにも、オーナー側もそのような手続があることを理解する必要性を感じています。
用途変更の確認申請手続きが必要となる用途
用途変更確認申請とは、建物を特殊建築物の用途に変更する場合に必要な確認申請手続きです。
特殊建築物というと何か特殊な用途を浮かべてしまうと思いますが、建築基準法の法別表第一で規定されている用途です。それでは法別表第一を確認していきましょう。
用途変更確認申請が必要となる用途(法別表第一)
(一)劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場その他これらに類するもの
(二)病院、診療所(※)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等
(三)学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場
(四)百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場 公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗
(五)倉庫
(六)自動車車庫、自動車修理工場、映画スタジオ、テレビスタジオ
類似用途の例外
ただし、例外として建物の用途が類似用途に該当する場合は用途変更の確認申請をする必要はありません。
類似用途も建築基準法で規定されていますので、確認していきましょう。
一 劇場、映画館、演芸場
二 公会堂、集会場
三 診療所(※) 、児童福祉施設等
四 ホテル、旅館
五 下宿、寄宿舎
六 博物館、美術館、図書館
七 体育館、ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場、バッティング練習場
八 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗
九 キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー
十 待合、料理店
十一 映画スタジオ、テレビスタジオ
※第1種低層住専地域内に三、六号に列記するもの、1・2種中高層住専地域内に七号に列記す るものがある場合は、上記例外はないので注意が必要です。
例えば下記のような用途変更が200m2以上の規模であったとします。
例1 ホテル→旅館
例2 体育館→スケート場
例3 飲食店→事務所
例4 飲食店→物販店舗
例1, 2は類似用途のため、用途変更の手続きは必要ありません。
例3 事務所は特殊建築物ではないため、用途変更の手続きは必要ありません。
例4 同じ店舗でも、例えば「飲食店:カフェ」から「物販店:雑貨屋」の用途変更は類似用途に該当しないため
用途変更の手続きが必要になってきます。店舗のサービスの種類によって、建築基準法で用途が変わってくるため注意が必要です。
用途変更の確認申請が必要かどうかの判断の難しさについて
用途変更について、様々な事例や関係法令をみていただきながら説明させていただきましたが、ご理解をいただけたでしょうか。建築の専門家ではない人にとっては用途変更の確認申請が必要かどうかの判断は、建築法規の専門性が必要になってくるため非常に難しいことが多いです。また普段から建築法規に触れている設計事務所以外では、なかなか判断することができなかったり、おざなりになっている事が現状です。
ご相談いただいた中には、知らないうちに建物が違反建築になってしまっていたという事例もありますので、不安な方は一度ご相談いただければと思います。
>>「オーナーが知らないうちに違反建築になっていることがあります」
また、実際に用途変更をご希望の方で確認申請が必要だとわかったら、その手続きの流れについて理解しておくとスムーズかと思います。用途変更は書類上の手続きだけではなく、必要に応じて工事を行なったり、調査などに費用がかかることもあります。用途変更を検討されている方は、用途変更についてしっかりと理解しておくことが重要です。
最適建築コンサルティングに関する詳細を知りたい方は資料もあわせてご参照ください。
検査済証のない建物の用途変更・増築や建築法規に関する内容でお困りの方はお気軽にご相談ください。